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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「これだけ働いて8000円なのか」元プロ野球選手が初めて知った現実…「吉祥寺の交番から“鬼の四機”へ」大田阿斗里35歳が警察官として生きる理由
posted2024/12/21 11:05
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Sankei Shimbun
苦難のデビュー10連敗、二度の戦力外通告、そしてトライアウトで手にした「一冊のパンフレット」……。2007年の高校生ドラフトで3巡目指名を受けた190cmの大型右腕は、なぜ引退後に警察官として生きることを選んだのか。14人の元プロ野球選手のセカンドキャリアに迫った『道を拓く 元プロ野球選手の転職』(扶桑社)より、大田阿斗里さん(元DeNA、オリックス)のエピソードを抜粋して紹介します。(全2回の2回目/前編へ)
「ちょっと、いい加減にしてくれない?」妻の叱咤
甲子園球場で行われた16年のトライアウト。「自分に区切りをつけるために」受験した大田阿斗里は清々しい気持ちで、妻と子どもの待つ自宅に戻った。
「トライアウトから自宅に戻って、“1週間ぐらいは何もせずにだらけるから”と、妻には宣言しました。でも、あまりにもだらけすぎたせいか、“ちょっと、いい加減にしてくれない?”と叱られました(笑)。そして、一冊のパンフレットを差し出して、“これを受けてみてくれない?”と言われたんです」
妻から差し出された「一冊のパンフレット」。そこには「警察官募集」と書かれていた。それは、甲子園球場でのトライアウトの際に各企業が用意した人材募集のパンフレットの山から、大田自身が持参したうちの一つだった。
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「トライアウト会場には、さまざまな企業の入社案内資料が置いてあったので、一応、すべて持って帰ったんです。すると、数ある企業の中から、警視庁のパンフレットを差し出されました。自分の身の回りにも警察官はいませんでしたから、“えっ?”と驚きました」
どうして、大田夫人は警察官を勧めたのか? その理由はシンプルなものだった。
「妻が言うには、“子どもにもわかりやすい職業だし、子どもにとっては野球選手と同じぐらいカッコいい職業だから”ということでした。当時、息子は5歳、娘は2歳だったかな? 僕自身、すぐに“よし、警察官になろう!”とは思わなかったけど、いろいろな人の話を聞き、選択肢を模索しながら2週間ぐらい考えた結果、妻と相談して決めました」