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懐かしき“トンガ旋風”覚えてる? 大学ラグビー大東文化大はなぜ甦ったか…30年前“日本一のチーム”でも見た「スリッパをきれいに揃える」大切さ
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/13 06:00
関東大学リーグ戦で7季ぶりの優勝を飾った大東大ラグビー部。実に30年ぶりとなる選手権制覇はなるか
そこでロペティさんは、親交のあった御所実の竹田寛行監督に相談し、受け入れてもらい、タヴァケは来日したのだが……高校時代はレギュラーには届かず、高校3年の花園でもリザーブ止まりだった。
本人は「高校のときはまだ日本語が話せなかったし、周りとコミュニケーションが取れなかったんです」と振り返る(それでも3回戦の長崎北陽台戦では途中出場で1トライを決めた)。
それが、叔父さんたちの母校である大東大に進学し、叔父さんたちも暮らした寮に住み込んでラグビーに取り組み始めてからは日本語もグイグイと上達。2年生の昨季から試合に出るチャンスを掴み、3年になった今季はFBのレギュラーをがっちり確保。リーグ戦全試合に背番号15をつけて先発。東海大戦では自陣ゴール前で相手パスをインターセプトし、90mを独走するセンセーショナルなトライをあげるなどチーム3位となる5トライ。7季ぶりの優勝に大きく貢献した。
「大学に来て、日本語がしゃべれるようになって、コミュニケーションが取れるようになってから自信を持ってプレーできるようになりました。頑張ってやってきたことを証明できてうれしいです」
名門校と比べ、優勝候補ではないけれど…?
早大、明大、帝京大……優勝争いの主役と目されるチームにはどこにも、高校時代から花園の全国高校ラグビーで活躍したスター選手がズラリと並ぶ。大東大にはそんなキャリアの持ち主はほとんどいない。花園には無縁の高校や、出たとしても初戦で敗退するような高校の出身者もいる。
だがそれは、30~40年前の優勝時も同じだった。地味な才能が規律を高く保ち、爆発的なポテンシャルを持つトンガの才能を輝かせることで、想像できなかったほどの化学反応が起きる――そんなことがあるのが大学ラグビーの面白さでもある。
本命と呼ぶには無理があるだろう。対抗馬にあげるのもちょっと厳しいかもしれない。だがそれは過去の優勝でも同じだった。馬券でいえば、大穴として1枚買っておきたい。無限のポテンシャルがある。
モスグリーン軍団は12月22日、三重県鈴鹿市で準々決勝を戦う。相手は関西2位の京産大vs対抗戦5位の青学大の勝者だ。交通アクセスは不便、鈴鹿おろしの冷たい風が名物という質素なスタジアムでの戦いは、大東大が力を出しそうな舞台のような気がする。