彼らの活躍は他大学にも波及し、2011年大会には日大卒のタウファ統悦、2015年の第8回ワールドカップで南アフリカ撃破、2019年は8強進出に貢献した花園大卒のアマナキ・レレイ・マフィら、トンガ出身留学生は日本ラグビーの大きな潮流になった。

現在も健在の大東大の“トンガパワー”

　今回の大東大でもトンガパワーは健在だ。

　プロップのリサラ・フィナウとCTBハニテリ・ヴァイレアはともにトンガから青森山田高への留学を経て大東大へ。フィナウはFW最前列でスクラムを組むフロントローながらボールを持って豪快な突進を繰り返す爆弾ランナーにして巧みなキックも繰り出すマルチなアタッカー。ヴァイレアは広い視野で相手ディフェンスを切り裂くバックスの突破役にして、今季100得点でリーグ戦グループの得点王に輝いた正確なキッカーだ。

2019年の日本W杯でも活躍したマフィもトンガ出身　©BUNGEISHUNJU

　そしてもうひとりの留学生選手、184cmの長身とダイナミックなストライドのカウンターアタックが魅力のFBがタヴァケ・オト。じつは、1994年度の大学日本一メンバー、ロペティ・オト及びその弟でやはり大東大＆日本代表で活躍したナタニエラ・オトの甥にあたる。

　タヴァケの父はロペティ＆ナタニエラら4兄弟で唯一ラグビーをしていなかった長兄シオネさんだ。タヴァケはニュージーランドで生まれ育ったが14歳のとき父シオネさんが他界。そのとき葬儀に参列したロペティ叔父さんとタヴァケは初めて会ったという。

　ローティーンで父を亡くしたタヴァケに、ロペティ叔父さんは「日本でラグビーをやる気はあるか？」と尋ねた。タヴァケは15人制ラグビーは未経験だったが、ルールが少し異なる13人制のラグビーリーグ（オーストラリアなどで盛ん）を10歳からプレーしていた。タヴァケは「行きたい。チャレンジしたい」と即答した。叔父さんたち譲りのバネに加え、叔父さんたちよりもサイズがある。ポテンシャルの高さをロペティさんは見抜いていた。

「叔父さんたちの話は小さい頃からたくさん聞いていました。日本に行ってラグビーで活躍して、ワールドカップにも出たと。その話を聞いて、僕も叔父さんのようになりたいと思っていた」

【次ページ】　名門校と比べ、優勝候補ではないけれど…？