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「モリヤス最大の長所」は攻撃的3バックでも交代策でもなく…「指導者ハセベも、最高の答えだ」トルシエが驚く“森保流マネジメント”の進化
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byJFA/AFLO
posted2024/12/15 11:04
2024年1月のアジア杯で対戦したトルシエ(当時ベトナム代表監督)と森保一監督。現日本代表のチーム運営を高く評価する
「それから“私の息子”はどうだ。ベルギーでプレーする小柄な……」
――藤田譲瑠チマですね。
「彼もまた田中、遠藤、守田らと同じレベルにあり、未来が開けている」
――あなたに伝えたかどうか定かではないですが、現役を引退した長谷部誠がテクニカルスタッフに加わりました。
「彼は国際経験が豊かでヨーロッパで長くプレーした。ヨーロッパの経験を積んだ選手たちが指導者になることで、日本にはまだまだ進歩の余地がある。彼らのアドバイスがチームの環境を変える。
チームにとって環境はとても重要だ。日本がヨーロッパから遠く離れていることを忘れてはならない。ヨーロッパのサッカー文化を日本に持ち込むのは簡単ではない。長谷部のような存在がスタッフに加わり、選手の環境を変えていくことは大きなプラスアルファだ」
ハセベのような人材を…モリヤスの大きな長所だ
――森保監督自身が望んで実現したことでした。自らの国際経験の欠如を埋めるために、彼は長谷部をスタッフに加えました。
「森保は柔軟かつオープンな性格で、他人を尊重して意見に耳を傾ける。長谷部のような人材を周囲に置くことを厭わない。それは森保の大きな長所だ。だからこのグループはとてもバランスがいい。森保は日本人で、チームには日本の文化が着実に存在する。そして海外組が日本に戻った際には、ピッチの外で彼らは日本文化の再認識と再吸収を求めている。
1月(アジアカップの際のドーハでのインタビュー)に私が君に言ったのは、外国人監督が日本にプラスアルファをもたらすだろうということだった。しかし今日のチームの機能ぶりと、森保が自らのやり方に修正を加えてさらに多くをチームにもたらしたことを見れば、今のやり方がW杯後の課題への最高の答えだったといえる」
――ここまで2位以下と大きく差の開いた最終予選はかつてありません。
「日本に関してはそうだが、今日はバーレーンがオーストラリアと引き分け、インドネシアがサウジアラビアを破った。4位までに入ればプレーオフに進める。日本を除く5カ国には等しくチャンスがあり、どこもまだ終わったわけではない」
――競争はまだ続きますが、日本が3月にW杯出場を決める可能性は高いです。
「数字の上ではホームで勝てばほぼ出場が決まる。今日の勝利で予選突破に向けて大きく前進した。日本も森保も、心穏やかにクリスマスを迎えられる(笑)」
エコシステムにおいて日本は世界トップクラスだ
――とはいえアジア予選を抜けて、ベスト8以上を目指すW杯本戦で待ち受けるのはブラジル、アルゼンチン、フランス、スペイン、イングランドなどの強豪国です。まだ彼らとは差がある面は否めないのでは?
「いや、エコシステム(生態系)において、日本は世界トップクラスだ」
――どういうことですか?〈つづく〉