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「命を捨ててバレーボールするなんて」栗原恵を襲った“脳血栓”…大病の原因は“ピルの副作用”「何万人かに1人というリスクがたまたま…」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/03 11:03
現役時代の闘病期を振り返った栗原恵さん(40歳)。周囲のサポートへの感謝を今も忘れない
激しい頭痛など身体の異変から、トレーナーに連れられて病院を受診するとその病名を告げられた。「脳血栓」――脳梗塞(こうそく)のひとつで、脳内の血管が動脈硬化などで詰まる大病だ。そのまま入院が決まり、投薬治療が始まった。
「島から駆けつけてくれた母親からは『命以上に大事なものはないんだから、命を捨ててバレーボールをするようなことは絶対にやめて』と言われました。それを聞いた時、本当に申し訳ないことをした。ごめんなさいって思いました」
ピルの副作用「何千人、何万人かに一人」
脳血栓の原因は意外なものだった。選手としてコンディション維持のために飲んでいたピルの副作用として症状が出たことが分かった。
「以前、前十字靭帯を切ったのが生理のタイミングだったんです。生理の時って関節が緩くなってそういう怪我が起こりやすいので、その手術をきっかけに婦人科も受診してコンディションのためにピルを飲むようにしていました。その結果、何千人、何万人かに一人というリスクにたまたま当たってしまって……」
所属先の日立リヴァーレには、現役引退する意思を伝えた。「命を一番大事にして」という母の気持ちに応えたかったことはもちろん、チームに迷惑をかけたくないという思いもあった。しかし、予想に反し日立からは強い慰留を受けたという。
「監督やチームの方から『今年だめでも来年頑張ってみたら』、『このままメグを放り出すわけにはいかない』と言っていただきました。本当にありがたい言葉ですが、籍だけ置いて“給料泥棒”はできない。ただただ申し訳ないと気持ちが揺れ動いていましたが、最後に背中を押してくれたのは主治医の先生でした」