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「前日は、なかなか寝付けなくて」侍ジャパンの最年少右腕・高橋宏斗がアメリカ戦で得た意外な収穫とは?「44歳のヒルさんのピッチングに…」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/30 11:05
次回のWBCでは先発の柱として期待される中日・高橋宏斗
寝付けなかった米国戦前夜
任されたのは2次リーグ初戦のアメリカ戦(東京ドーム)。若手中心だが、トッププロスペクトがそろっており、油断できない打線だった。難しい調整と難敵。高橋が優先したのは「疲労をとること」そして「いいイメージをふくらませること」だった。
「(アメリカ戦の)前の日は、なかなか寝付けなかったんです。だから動画を見てました。メジャーの投手がどう抑えているのか。(山本)由伸さんもそうですし、スキーンズ投手のも見てました。スキーンズは僕と同い年。打者がわかっている中で、100マイル(約161km)を投げる。そのメンタリティはすごい」
パイレーツで11勝3敗、防御率1.96という成績を残し、新人王に選出されたポール・スキーンズ。爽快なパワーピッチングを目に焼き付け、ようやく眠りに落ちたという。
44歳の左腕と投げ合い
そして迎えたアメリカ戦は、圧巻のパワーピッチを披露した。1回の三者連続を含む、毎回の8奪三振。ストレートで押し込み、スプリットで空振りを奪った。無失点でブルペン陣にバトンを渡したのだが、この試合で大会最大の収穫を得る。それは米国の先発、リッチ・ヒルだった。
年齢は高橋の倍の44歳。日本式でいえば、松坂世代の1学年上にあたる。2005年にメジャーデビューして以来、13球団を渡り歩いた典型的なジャーニーマンである。通算90勝のベテラン左腕の球速は、高橋のスプリットよりも遅い140km台前半だったが、侍ジャパンの打者は全くタイミングを合わせることができなかった。
「ヒルさんのピッチングは…」
同じ球種でもフォームにもボールにも強弱をつけ、まるで違う球種を投げ分けているかのように打者に強いスイングをさせない。同じ4回で高橋は2安打だったが、ヒルは辰己涼介に打たれたセンター前の1本のみ(5奪三振)。
もっとも、ヒルの奥深いピッチングを、高橋は直接見てはいない。味方の攻撃中にベンチ前でキャッチボールを行うNPBスタイルは、国際大会では認められておらず、攻撃中はベンチ奥にあるブルペンにこもりきりで、次の回への準備をしていたからだ。