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“羽生善治とパス交換”元サッカー日本代表FWが「“詰め将棋”でゴールの戦術眼トレ」、渡辺明は4級審判員…一流棋士・選手とも夢中な共通点
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS/Yuki Suenaga
posted2024/11/26 06:00
W杯日本代表経験者の中村航輔と、通算タイトル31期の渡辺明。サッカーと将棋の両方を愛する、それぞれの代表格である
やがてレッズは、ブッフバルトの堅い守備や日本人初のJリーグ得点王になった福田正博らの活躍によって、好成績を挙げるようになった。日本が1998年フランスW杯への初出場を決めたイラン戦で、レッズの岡野雅行が決勝ゴールを決めたのはとてもうれしかった。
私は90年代後半、将棋に関連した著名人を紹介する記事を『週刊将棋』に連載していた。
Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎は、93年のNHK紅白歌合戦で同じ審査員として出演した縁で、棋士の米長邦雄永世棋聖(当時は名人)と交流が始まった。翌年には国立競技場の一室で、米長から川淵に三段の免状が贈呈された。実際に川淵は社会人時代、昼休みに将棋をよく指した。選手時代はフォワードを務め、足が速かったので「将棋の香車みたい」と言われたそうだ。
川淵から私に渡された名刺には、「Jリーグ百年構想」というスローガンが記されていた。発足時の人気に陰りが生じた状況で、長期的な視野で取り組むことが大事という考えだ。将棋の「順位戦」のABCのクラスのように、Jリーグを1部と2部(現在は3部まで)に分けたことで、降格したチームは人気や経営面で打撃が生じかねない。ただ全体のレベルアップのために、厳しさが必要だと川淵は力説した。
トルシエに“詰め将棋”を勧めたかったワケ
あるスポーツ紙に「詰め将棋を新たな引き出しに」という見出しの記事が載った。筆者はスポーツジャーナリストの二宮清純。将棋を愛好する二宮は、得点力不足に悩んでいるサッカー日本代表の監督(当時はフィリップ・トルシエ)には詰め将棋に目を向けてほしいと提言した。それは論理的思考で玉を詰めることが、得点に至るプロセスでもあるという。
「トルシエがまだ使ったことのない新しい引き出しに、手をかけるきっかけになると思う」
こうも語った。
二宮は90年代前半にラグビー神戸製鋼の祝勝会で、羽生善治九段と会う機会が何回もあった。主力選手の平尾誠二は共通の知人だった。「羽生さんの印象は話していると普通ですが、既成概念を打ち破る天才棋士独特の雰囲気が漂っていて、宇宙人に見えましたね(笑)」とも語っていたことがある。
2002年に日韓W杯が開催され、日本は予選リーグを勝ち抜いて決勝トーナメントに進出した。その1回戦で日本はトルコと対戦した。競技場は宮城県だったが、東京・千駄ヶ谷の周辺に多くのサッカーファンが集まって歩き回っていた。しかも鼻骨骨折によって顔面を保護するフェイスガードを付けて試合に出た宮本恒靖(現日本サッカー協会会長)を応援するためか、同じ格好の人が多く、今思えば異様な雰囲気だった。試合は日本が0ー1でトルコに敗れた。
名鑑に“将棋が趣味”と記した日本代表って?
毎年春にスポーツ紙に載るJリーグ選手名鑑を見て、趣味欄が将棋という選手は何人かいた。