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「二度とリングに上げるべきではない」58歳マイク・タイソンの“懐メロ興行”は成功だった? 7万人動員、Netflix6500万人視聴、金儲けは成功も 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2024/11/20 11:12

「二度とリングに上げるべきではない」58歳マイク・タイソンの“懐メロ興行”は成功だった? 7万人動員、Netflix6500万人視聴、金儲けは成功も<Number Web> photograph by Gole Images

58歳にして“復帰”したマイク・タイソン。人気YouTuberジェイク・ポールとの一戦を7万人を超える大観衆が見守った

 繰り返しになるが、かつてタイソンは強かった。マイケル・スピンクス、ラリー・ホームズ、フランク・ブルーノ、トレバー・バービックといった同世代の強豪ボクサーたちを寄せ付けなかった頃の勇姿を記憶したファンにとって、ポールのようにトップレベルではない選手に負ける姿は見たくはないものだっただろう。

 感情的な話だけではない。特に格闘技はその競技の性質上、単に“懐メロ”を楽しむことは難しく、高齢選手をリングに上げれば健康面のリスクがどうしてもつきまとう。楽しみながら戦う余裕のあるエキシビションならまだしも、タイソン対ポール戦は事もあろうに公式試合と認定された。

 ニューヨーク、ラスベガス、ロサンゼルスといった都市のアスレチック・コミッションが実戦から20年近く離れた58歳のボクサーの戦いを認可することは考えられず、コミッションの基準がより緩いテキサスが開催地として選ばれた。そういった流れの中で復帰戦のリングに立ったタイソンは案の定、年齢相応に抜け殻のようでもあった。

もし壮絶な打ち合いになっていたら…

 この興行の取材を終えて、スタッフの一人がこんな話をしていたのを聞いて耳を疑わざるを得なかった。「盛り上がらなくて残念だった。もっとガンガン打ち合い、激しくエキサイティングな内容、結末になるのかと思っていたのに」

 2005年の時点で精も根も尽き果てていたボクサーが、約20年後の公式試合で復活する理由はない。もちろん入場料に大金を費やしたファンが“もっと上質なアクションが見たかった”と考えるのは理解できるが、正直、“激しくエキサイティングな内容、結末”にならなくてよかったのではないかとも思えた。

 そんなバトルになっていたら? ポールにその意欲と技量があったとすれば? 今回の試合前、「6月に潰瘍で血の半分と体重25パウンドを失った」と明かしていたタイソンが、深刻なケガを負っていても不思議はなかったはずだからだ。

【次ページ】 「公式試合のリングに上げるべきではない」

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