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「二度とリングに上げるべきではない」58歳マイク・タイソンの“懐メロ興行”は成功だった? 7万人動員、Netflix6500万人視聴、金儲けは成功も
posted2024/11/20 11:12
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Gole Images
5ラウンド以降、テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムにはブーイングばかりが鳴り響いた。開始当初の爆音のような歓声はほとんど聞こえなくなり、回を重ねるごとに罵声の声量ばかりが大きくなっていった。しかし、ここでブーイングを送ったファンはこの戦いにいったい何を期待していたのだろう?
7万人を超える大観衆、Netflixがパンク
元世界統一ヘビー級王者マイク・タイソンが11月15日、58歳にしてリングに復帰し、27歳の人気ユーチューバー、ジェイク・ポールとヘビー級8回戦を行った。この異色のボクシング興行の人気は常軌を逸したほど。当日はなんと7万2300人という大観衆が集まり、イベントを生配信したNetflixのストリーミングが対応しきれずにパンクしてしまうという異常事態となった。
「相手はタイソンだ。戦えたことが光栄だ。偉業を成し遂げた伝説の男を尊敬し、刺激をもらってきた。地球上で最もタフで強い男なんだから」
試合後、ポールは拳を交えたばかりの男をそう評していたが、この日の大スタジアムを埋め尽くしたファンの大半が、半ば幻想のように同じ思いを抱いて会場に足を運んだのかもしれない。
1986年に20歳5カ月という史上最年少で世界ヘビー級王者となったタイソンは、80〜90年代に一世を風靡した元スーパースター。史上最高レベルのボクサーではなかったのかもしれないが、ダイナマイトパンチとカリスマ性ゆえに世界中で名を知られる著名選手になった。その知名度を考えれば、「モハメド・アリとタイソンこそがボクシング史上最大のアイコンだった」という元ESPN.comのダン・レイフィール記者の言葉は決して大袈裟ではなかった。
ただ、今は80年代でも90年代でもなく2024年である。当然のことだが、60歳を間近に控えたタイソンにはピーク時の面影など微塵もなかった。