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「私の仕事は走ること。でも…」陸上・田中佑美(25歳)が“モデルハードラー”の肩書に思うこと「違う角度からファンを呼び込むのも大切だと思います」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by(L)Shiro Miyake、(R)JMPA
posted2024/11/15 11:01
五輪では多くのファンの注目を集めた田中佑美(25歳)。春先にはファッション誌のモデルも務めるなど、多様な活躍を見せるが「あくまで陸上が100%」と本人
高校、大学で世代チャンピオンとなった田中だが、“ニューヒロイン”として注目が集まったのは昨年のこと。春先、日本人女子4人目の12秒台をマークすると、日本選手権の激しい競り合いを3位で勝ち抜き、ブダペスト世界選手権代表の座を射止めた。
そしてパリ行きがかかっていた今季は、寺田明日香(ジャパンクリエイト)、青木益未(七十七銀行)、福部真子(日本建設工業)、田中を筆頭に12秒台が6人そろい、歴史的な激戦が予想されていた。その渦中にある田中にどれほどの重圧がかかっていたかは、想像に難くない。
「一定の露出は必要ですけれど、ガチガチの陸上取材ばかり受けていたら、余計にプレッシャーになるなと気づいて。少し離れて『陸上してます』くらいの温度感で受けられる取材が、ちょうどいいリフレッシュになると思ったんです」
後輩に「モデルですもんね」と言われて…(笑)
幼少期からクラシックバレエを習い、宝塚音楽学校を目指していただけあって、カメラの前に立つのに苦手意識はなかった。モデル挑戦は、シーズンインにむけて心のチューニングを合わせるという意味合いもあったようだ。
「でも、アスリートとモデルの二刀流だと誤解されがちなんです。この前も後輩に『佑美さん、モデルですもんね』って言われて。私としては『アスリートを可愛くしてみました!』という趣旨の企画をお受けしているだけで、モデルを職業としているつもりはないのですが……(笑)」
田中はあくまで「アスリート100%」と言うが、メディアの“モデルハードラー”という肩書きだけを見ると、モデル業と両立していると勘違いする人もいるだろう。こうした誤解が広がり、競技外の部分に注目が集まると、「競技に集中するべき」などと中傷されるリスクも生まれてしまう。
彼女自身も「自分のコントロール以上に話が広がっていくので、より一層振る舞いに注意しなきゃと思っています」とこう続ける。
「私の仕事は走ることなので、そこにフォーカスしていくスタンスは変わりません。SNSを積極的に使うタイプではないですし、プライベートを切り売りする必要はないのかなって。ただ、こうして注目度が上がったのも、足が速いからではなく他の要素もあってのことだというのは理解しています」