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「ちょっといいか」新大関・大の里が師匠から呼び出されて受けた「大関の訓示」とは? 2度目の優勝の夜、恩師にかけた“ある依頼”の電話 

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田井弘幸

田井弘幸Hiroyuki Tai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2024/11/14 17:01

「ちょっといいか」新大関・大の里が師匠から呼び出されて受けた「大関の訓示」とは? 2度目の優勝の夜、恩師にかけた“ある依頼”の電話<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

二所ノ関部屋で土にまみれて稽古に励む大の里

「そういうところに自分は上がるんだなと感じた。これは今まで通りのやり方では駄目なんだなと。力士になってふわふわしていたところもあったけど、親方のあの言葉で気持ちがより一層引き締まった」

 覚悟が固まった。

「相撲をもっと学び、勉強していく。上へ上へと頑張っていく。壁にぶつかるかもしれないけど、もう立ち向かっていく」

 9月25日。午前9時すぎに相撲協会の九州場所番付編成会議と臨時理事会で大関昇進が満場一致で決まった。両国国技館を出発した使者が1時間程度で二所ノ関部屋へ到着すると、紋付き袴をびしっと着た大の里は注目の口上を力強く披露した。

「大関の地位を汚さぬよう、唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」

 晴れがましい席上で、何とも気宇壮大な四字熟語が飛び出した。「他に並ぶものがないほど突き抜けている」との意味の言葉を選んだ。雄姿を見届けた両親や妹、部屋関係者らとの乾杯から、大きくて立派な鯛を左右の手で1尾ずつ持って記念撮影。魚たちは日の出の勢いのスター候補を祝うかのごとく、瑞々しい光沢を反射させた。記者会見で「唯一無二」のイメージを問われると「他に類を見ない。もうこのような人は現れないというくらいのお相撲さんになりたい」と堂々と言い切った。

2度目の優勝の夜、恩師にかけた依頼の電話

 秋場所14日目の夜だった。大の里は大関豊昇龍を一方的に押し出し、13勝1敗で2度目の優勝を決めると同時に大関昇進を手中に収めた。午後7時頃、恩師に電話をかけた。「おかげさまで優勝できました」と報告した後、昇進した場合との前置きをした上で「伝達式での口上の言葉を考えてもらっていいでしょうか」と告げた。新潟県立海洋高校の相撲部監督として中学時代から6年間指導した教え子から唐突な依頼を受けた村山智明(45)は「そういうことは親方たちが考えるだろう」と戸惑いながら答えた。そのまま返答を保留したのは千秋楽まで気を抜かずに集中してほしいという願いからでもあった。村山は一昨年4月に海洋高校から新潟県観光文化スポーツ部スポーツ課に異動したが、立場が変わっても距離が離れても、思う気持ちは往時のままだ。

 初めての出会いは小学4年の頃で、中村泰輝少年が石川県から練習に参加した時だった。当時は北信越ブロック大会で勝ったり負けたり。ただ相撲の素質以上に光るものがあった。村山は述懐する。

【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内の「父と行ったあのドライブイン、覚えてます」大の里が体現する「唯一無二」とは何か…父、恩師らが明かす“24歳新大関”の原風景で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

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