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パリ五輪「グッズ在庫セールに大行列」「五輪マークも飾りっぱなし」まさかの“五輪ロス”なパリを巡ってみたら…「セーヌ川はやっぱり汚かった」
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph byYuji Hirooka
posted2024/11/03 11:05
10月になっても五輪を懐かしむ雰囲気のエッフェル塔前
ところが、すべては開会式でガラリと一変した。つい先日、開会式には1億ユーロ(170億円)かかったことが明らかになった。ロンドン大会の3倍以上だ。大散財だったが、それはムダ金ではなかったというわけだ。
大会に税金はほとんど使われていないし、パリは連日メダル・ラッシュに沸き、4つの金メダルを取った水泳のレオン・マルシャンというヒーローも生まれた。メダリストがファンと共に喜びを分かち合う「le Club France」や「Parc des Champions」、会場を賑やかす応援団の設置など、組織委員会も努力した。
素直に喜んでしまったフランス人
「批判的人間」こそ期待される人間像であるはずのフランス人が、素直に喜んでいたのだ。
オリンピック閉会式の翌日の編集部論説・社説では、右派の《ル・フィガロ》も「分裂し、硬直し、ボロボロになった国フランスは、今大会の間自信に満ちて誇らしげであった」、左派系の《リベラシオン》も「私たちの至福を受け入れよう、パリは、このオリンピック期間中ほど美しく快かったことはない」と、最大級の称賛を述べた。
《リベラシオン》は、「あらゆる社会階層、世代、性別、アイデンティティ、出自の人々が敵意や憎しみなしに混ざり合っていた」という。たしかに、今年のパリの夏には、戦争・差別・憎悪に揺れる世界とは別の空間が生まれていた。
オリ・パラのチケット販売は1213万枚
この熱は、パラリンピックにもつづいた。パリ市民は、テレビで見たオリンピックの感動を実感したいと競技場に殺到した。
スポーツ・オリ・パラ省によれば、今大会のチケットはオリンピック955万6792枚、パラリンピック257万5855枚、合計1213万2647枚が売れた。歴代五輪の最高記録である。パラリンピック閉幕前日の9月7日にスタッド・ド・フランスで行われたパラ陸上競技には、6万7500人の観客が集まった。
競技だけでなく、気球の聖火台を間近で見るための整理券26万枚も、数時間で完売したという。