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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「これまでと違うやり方をした」パリ五輪チーム作りは正解だったのか? 大岩剛監督が振り返る異例のアプローチ…「ポジションの役割明確化」とは
text by
佐藤景Kei Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2024/10/09 11:01
8月いっぱいで五輪代表監督を退任した大岩氏は終始穏やかな表情で語った
果たして大岩監督は、時間が限られる代表活動の中では難しいと思われるアプローチを選択した。選手のセレクトを重視するのではなく、選手に求めるものと各ポジションのタスクを明確にし、チームを作り上げる決断をしたのだ。
それこそが日本の持ち味を最大化することにつながると考えたからだった。
各ポジションの役割を明確化する
「最初からパリオリンピックのファイナルに進むこと、そこでメダルを取ることをロードマップとして選手たちに示していましたが、そこから逆算したとき、選手の特徴やストロングを考えると、このやり方が一番合っていると思いました。
これまでシステムがどうとか、止める蹴るがどうとか、中央突破、サイド攻撃、最後はテクニックで崩すとかいろんな議論がありました。でも結局、これは僕自身の反省も込めて言うのですが、それぞれのポジションのやるべきことを明確にできていなかったように思います。それぞれの役割をはっきりさせて、もっと高いレベルでやろうとしたら、例えばボールを持っている選手から一番遠い選手だってその状況において何をすべきかがはっきりとしてくる。2人目、3人目の動きだけではなくて、チーム全体でいかに動いていくかが明確になる。
当たり前と言えば当たり前ですが、でもその当たり前が疎かになっていた面があったと思います。サイドバックと同サイドのウイングと、逆サイドのウイングは同じ一つの状況でも見ているものは違うはずです。でも一人がここに動いたら、ここにスペースができて、だからここを使うために走り出せばいいと迷わず判断できればピッチに大きなプラスが生まれる。その瞬間に見ているものが違っても、ポジションごとの役割を理解していれば、目線を合わせてプレーすることができるわけです。U-23日本代表の監督として選手の視座が合うようなアプローチをしなければいけないと思いました」
ミーティングで映像を使ってシチュエーションを示し、ポジションごとの役割を繰り返し伝えた。最初はスペイン代表の映像を見せることも多かったが、次第に日本の映像の割合が増えていく。イメージの共有を図るためのお手本となるようなプレーが、実際の試合で生まれるようになったからだった。
メンバーが代わっても同じ役割を求める
五輪代表の試合はFIFAの定めるインターナショナルウインドー(クラブに代表への選手派遣義務がある期間)外の活動で行うこともあるため、クラブ事情から招集がかなわず、メンバーの顔ぶれはたびたび変わった。それでも指揮官はアプローチの方法を変えなかった。