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「これからはもう無敵?」男子バレーの“必殺仕事人”宮浦健人が福澤達哉に語った「100%の準備」…意識を変えた“福澤さんのひと言”とは?
posted2024/09/17 17:05
text by
藤森三奈(Number編集部)Mina Fujimori
photograph by
Kaoru Watanabe / JMPA
オポジットの宮浦健人選手は、どのようにベンチで過ごし、限られた出場時間の中で何を想っていたのか。大好評シリーズ、動画の「Number Volleyball Night」で、現地で解説をした福澤達哉氏にインタビューしてもらった。
宮浦健人が変わるきっかけになった言葉
福澤 早速ドイツ戦から振り返ってもらいたいんですが、私も初戦のドイツ戦が山だと思っていました。ネーションズリーグで苦しめられていたし、勢いのあるチームという印象でした。初戦が大事と言われるなかで、そこに向かうチームや宮浦選手個人の状態はどうでしたか。
宮浦 初戦が朝9時からだったので、チームはそれに合わせて3日前から同じ時間にゲーム形式の練習をして調整していました。その点では順応できていたと思います。試合前の練習も、緊張感をもってやれていましたし、何かが悪いということはありませんでした。雰囲気はよかったです。
自分としては初めてのオリンピックということで、すごくモチベーションが高く、迷いなくできていたので、いい準備ができていたのかなと。
福澤 オリンピックの前哨戦と言われたネーションズリーグ(5~6月開催)では、宮浦選手の調子が思うように上がらず、悩みながら戦っていたように見えました。そこから少し時間があり、ポーランドで強化試合をしてパリに入ったわけですが、自分のパフォーマンスに対する不安は解消されていたんですか?
宮浦 ネーションズリーグでは、皆さんも見てわかる通り、思うようなプレーができなくてすごく迷いがありました。探り探りやっていた部分があって。
そんなとき、変わるきっかけになったのが、ネーションズリーグ日本ラウンドで福澤さんにかけてもらった言葉です。自分は、できなかったプレーをできるようにするにはどうしたらいいか解決策を考えるタイプなんですが、福澤さんから「できたことに対して気持ちを乗っけていけばいい」と言われました。「他の選手が点を決めたときでも、自分がスパイクを決めたときでも、それをきっかけに自分自身に勢いをつければいいんじゃないか」と。
自分に足りなかったのはそこだと意識するようになって、パフォーマンスと調子が徐々に良くなっていったんです。
これからはもう無敵?
福澤 タイプ一緒なんだよね。あの時の宮浦選手の環境が手に取るようにわかったから。私の場合は日本がリオ五輪出場を逃して、次、東京五輪というときに海外に行くことを決めました。そこで、バレーは自分一人ではない、チームスポーツだからと気づいたんです。他の人も含めた1点のプレーに気持ちを乗せていくことにした。その時30歳を超えていたけど、宮浦選手は25歳でそれに気づけたんだから、これからもう無敵ですね。
宮浦 福澤さんにあの時ああ言ってもらえなかったらまだ迷走していたかもしれません。
福澤 海外に行く前の宮浦選手と、海外に行ってからの宮浦選手で何が変わったかというと、自己表現がすごく大きくなったところだと思います。
もともと仕事人で黙々とやるイメージだけど、コートに入ると西田有志選手に負けず劣らずのパフォーマンスをするのを見ていました。でも、ネーションズリーグのときにはそれがなくなっていると思ったので言ったんです。スイッチを入れるきっかけになったのならよかった。