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「僕に噛みつくほど、勝利への執念がある」ドヘニーと戦った元世界王者・岩佐亮佑が見た井上尚弥戦…慎重な戦法は「性格も出ていたかなと」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byNaoki Fukuda

posted2024/09/10 17:01

「僕に噛みつくほど、勝利への執念がある」ドヘニーと戦った元世界王者・岩佐亮佑が見た井上尚弥戦…慎重な戦法は「性格も出ていたかなと」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

結局は井上に圧倒されたとはいえ、ドヘニーの戦いは決して恥ずべきものではなかった

「即終了だったので、なんで? と思いましたが、ケツを押さえていたので、しびれていたんでしょう。終わり方として、後味は悪かったです。試合前はもしかすると、何かあるのかもしれないと少し思いましたが、何も起きなかったですね」

 しみじみと話す言葉には実感がこもる。スキをまったく見せなかった井上の完璧なボクシングに感服するばかり。ダウンを喫したネリ戦から改善し、一抹の不安も完璧に払拭していた。

岩佐に噛みついてきたドヘニーの執念

「目標値がいまの4団体統一王者ではなく、もっと高みを見ているのかなと。だから、考えて修正もできるんだと思います。あのメンタルのつくり方はすごいというほかない」

 試合は消化不良で終わったが、岩佐は最後までドヘニーに敬意を払っていた。守備的な戦い方を選んだのも、勝利への意欲が強かったからこそ。32歳で世界王座から陥落し、その後に3敗しながらも、不屈の精神で4団体統一王者への挑戦権を得たのだ。1年前、後楽園ホールの舞台裏で暗闇の中、試合前に子どもと2人で神に祈りを捧げていた姿は忘れられないという。

「勝利への執念、魂をものすごく感じるんですよ。僕との試合でもボディを打たれて苦しかったのか、必死にクリンチしてきて、僕の鎖骨下辺りにがぶっと噛みつきましたから。何が何でも勝ちたかったんでしょうね。こっちは血が出たので、外国人のレフェリーにアピールしましたけど、『噛まれた』という英語が分からなくて(笑)。すごい力でしたよ。最近まで噛まれた痕が残っていたくらいです。反則はどうでもいいのですが、あの精神力には驚きました」

 岩佐はドヘニーに対し、リスペクトという言葉を何度も口にする。試合前から話題となった前日計量からの“リカバリー”についても、熱っぽく話してくれた。

<後編へつづく>

#2に続く
「ドヘニーの増量は間違っていなかったけど…」元世界王者・岩佐亮佑が読み解く井上尚弥の将来図「アフマダリエフが“塩試合”に持ち込めれば」

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