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「ドヘニーの増量は間違っていなかったけど…」元世界王者・岩佐亮佑が読み解く井上尚弥の将来図「アフマダリエフが“塩試合”に持ち込めれば」

posted2024/09/10 17:02

 
「ドヘニーの増量は間違っていなかったけど…」元世界王者・岩佐亮佑が読み解く井上尚弥の将来図「アフマダリエフが“塩試合”に持ち込めれば」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ドヘニーの増量ばかりが喧伝されたが、岩佐の目からすると井上の体もスーパーバンタム級としては大きかったという

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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Takuya Sugiyama

世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥に挑んだ37歳のTJ・ドヘニーを特別な思いで見守る元世界王者がいた。6年前の2018年8月、世界王座の2度目の防衛戦で剛腕のアイルランド人と拳を交え敗れた元IBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑である。井上―ドヘニー戦から数日後、赤いチャンピオンベルトが飾られた自宅のリビングで話を聞いた。<全2回の後編/前編を読む>

 9月3日の世界スーパーバンタム級4団体統一戦では、試合当日の体重上限が設けられていなかったこともあり、開始のゴング前からウエイトが注目された。井上尚弥は前日計量のスーパーバンタム級リミット体重55.3kgから7.4kg増の62.7kg、TJ・ドヘニーは55.1kgから11kg増の66.1kg。大幅増量のデメリットを指摘する声も聞こえてきたが、元世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑は力を込めていう。

ドヘニーの増量は間違っていない

「37歳であの動きができるんだから、何も間違っていなかったと思います。井上選手が強すぎて大きな差は出ましたが、直近の試合を見てもドヘニーの動きはそれほど変わっていません。ここまでも同じようなやり方で勝ち続け、井上選手に挑戦する権利をつかんだんです。そこはリスペクトしたい。どんな体重、体だろうが、本人にとってはあれが正解。日本人と外国人では筋肉の質も違いますから」

 目を引いたのは、ドヘニーの大きな体だけではない。井上の鍛え抜かれた上半身も特筆すべきもの。本人が「試した」という7kg増の体もまたスーパーバンタム級では大きく見えたという。質の良い筋肉をつくり、しっかり絞り込んでいるのは、すぐに見て取れた。もちろん、見た目だけの話ではない。

「7kg増やした井上選手もスピード、切れともにこれまでと変わっていなかった。いつもどおり、正確でした。距離の取り方、パンチをよけるミリ単位の感覚、一瞬の反応を見れば、分かると思います。ドヘニーのパンチもきっと計算どおり、紙一重でかわしている。感覚に少しでもズレが生じれば、あのような動きはできないはずです。もともと7kg戻す体をつくっていたんだと思います。もしも5kg戻す体に7kg戻していれば、その感覚もズレたかもしれないですが」

 前日計量後の“リカバリー”は、緻密な計算のもとに行われている。王者の井上だけではなく、挑戦者のドヘニーに対しても、当てはまること。減量とリカバリーを繰り返してきた元世界チャンピオンは、誤解のないようにあらためて説明してくれた。

【次ページ】 リカバリーで増えているのは、筋肉の水分

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