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「僕に噛みつくほど、勝利への執念がある」ドヘニーと戦った元世界王者・岩佐亮佑が見た井上尚弥戦…慎重な戦法は「性格も出ていたかなと」
posted2024/09/10 17:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Naoki Fukuda
33歳でグローブを吊るして1年あまり。現在は車事業を行う実業家の顔を持ちながら解説者としても活躍する岩佐亮佑の考え方は、現役時代と一つも変わっていない。
リスペクトするドヘニーを応援しますよ
「リングで一度でも戦った相手は、やっぱり特別。たとえ、勝ったとしても、負けたとしても、リスペクトの気持ちは持っています。仲間のように思うドヘニーは、僕より3歳上なのにいまも現役で世界の『トップ・オブ・トップ』に挑戦するんですから、100%に近い思いで応援しますよ」
戦前から絶対王者である井上尚弥の圧倒的な優位は動かない。それでも、ルイス・ネリ(メキシコ)戦で1回にダウンしたシーンが頭をよぎった。岩佐は思考を巡らせた。これまで井上がもらうはずのなかったパンチだった。何かが、良くも悪くも変わったのかもしれない。もしかすると、悪い兆候の表れなのか。9月3日の有明アリーナで、挑戦者の一発が当たる可能性もゼロではない。
ドーンと押してくるようなパンチ
「どうなるのかな、と思いながら見ていました。ドヘニーのパンチは重いですからね。いきなり出てくる、あの左ストレートは見えづらいんですよ。僕自身、リングで鋭さは感じなかったけど、ガツンじゃなくて、ドーンと押してくるような感覚がありました。あれをされると、リズムを崩されるので」
1年前の2023年10月にもドヘニーの一撃には度肝を抜かれた。後楽園ホールに解説者として訪れたときである。岩佐が現役最後に戦ったジャフェスリー・ラミド(アメリカ)を1回に左の一発で沈めたのだ。ダウンを奪った決定打のドカンと響く衝撃音は、リングサイドまで聞こえてきたほど。あらためて、「あのパンチは効くよな」と再確認した。
ただ、積極的に前へ出ていく印象はなかった。派手なKO劇を演じるハードパンチャーではあるが、戦い方はそのイメージと少し違う。「僕と対戦したときも、ガンガン来るのかと思いきや、あまり来なかったので」と苦笑する。岩佐自身、ドヘニーの老獪なアウトボクシングに手を焼き、判定負けを喫しているのだ。ラミド戦を見ても、距離の取り方を含めて慎重だった。井上戦の戦い方は、予想どおりである。いつも以上に後ろ重心ではあったが、驚くほどではない。