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「本当のバカじゃバカなことはできないんだよ」ガッツ石松が死去の1年前に遺していた“ガッツ語録”…ゴリラの写真を指さして「これ、栃木にいる親戚」
posted2026/06/13 11:06
2011年度のボクシング年間優秀選手表彰式で祝辞を述べるガッツ石松さん。「世界チャンピオン会」の初代会長も務めた
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi/AFLO
ボクシング元世界ライト級チャンピオンのガッツ石松さんが、6月2日に肺炎のため都内の病院で亡くなった。享年76。ボクサーとしても、タレントとしても、多くの人に愛された唯一無二の存在だった。
ゴリラの写真を指さして「栃木にいる親戚」
2025年4月中旬、西武新宿線沿線にある所属事務所ガッツエンタープライズで、筆者は貴重な取材の機会を得た。
コロナ禍以降、テレビでガッツさんを見る機会が激減し、体調を崩したという噂も飛び交っていた。取材も難しいのではと危惧したが、なんとか調整してもらい、対面でのインタビューが実現したのだ。
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事務所の応接コーナーで待つこと5分、母屋のほうからガッツさんがゆっくりと現れた。
いつもテレビで目にしていた、スーツ姿のがっちりした体格に、短髪でつぶらな瞳の“いかついガッツ”ではなかった。一目見て、かなりやつれた様子だった。白髪混じりの仙人のようなヒゲをたくわえ、体もひとまわり小さくなった印象を受けた。
少しだけ体調を崩していたが、今は大丈夫だと本人は言った。それでも挨拶を交わした声はかすれており、「OK牧場!」と連呼していたような往年の勢いはない。とはいえガッツさんは「ガッツ石松」らしく、壁にかかった無数の写真について説明してくれた。
「これ高倉健さん。それとこれはマイケル・ダグラス、マイク・タイソンに、オスカー・デラホーヤ。これわかる? スピちゃん(スティーブン・スピルバーグ)」
ボクシングのレジェンドたちに混ざって、映画やドラマで共演した日本の名優や、世界的映画監督と一緒に写った写真が飾られていた。豪華絢爛な面々との邂逅は、ガッツさんが歩んできた人生の歴史でもあった。
「あ、これわかる?」とかすれた声で指をさした写真は、少し斜めを向いているゴリラのバストアップだった。
ガッツさんは続けざまに「栃木にいる親戚」とボソッとつぶやく。
思わず笑ってしまった。掴みはOK牧場とばかりに、ガッツさんは「なんでも聞いて」という姿勢に入る。
「ロベカルじゃない?」「デュランです」
まずは対戦相手の話から始まった。ボクシング界のスーパーレジェンド、世界4階級制覇の“石の拳”ロベルト・デュラン戦について訊いてみた。
「うん、確かブラジル代表でレアル・マドリードだったかな。キャノン砲みたいな左だった」とガッツがあまりにすっとぼけた表情で言うので、即座に「それ、ロベルト・カルロスです」と突っ込んだ。
「ロベカルじゃない?」
「ロベルト・デュランです」
「デュランね」
ガッツさんは何事もなかったように話し始める。
ゴリラの下りがなければ、突っ込めなかったかもしれない。ベタなボケを前振りにして突拍子もないボケをかます。歳を重ねても変わらない頭の回転の速さと、サービス精神の旺盛さに感服した。

