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「箱根駅伝は呪いなんです」…“箱根を走れなかった”元ランナー→漫画編集者が「人気ジャンルではない」スポーツ漫画を立ち上げたワケ

posted2024/09/16 06:04

 
「箱根駅伝は呪いなんです」…“箱根を走れなかった”元ランナー→漫画編集者が「人気ジャンルではない」スポーツ漫画を立ち上げたワケ<Number Web> photograph by (L)本人提供、(R)蒼井ミハル

現在はヒット作も多く担当する漫画編集者になった鍵谷亮さん。それでも箱根路への想いは消えず、駅伝漫画を立ち上げたという

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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(L)本人提供、(R)蒼井ミハル

 今年も10月から学生駅伝のシーズンがスタートする。毎年20%を超える高視聴率を叩き出す年始の箱根路を筆頭に、近年の学生駅伝人気はすさまじい。だが、メディアで取り上げられる煌びやかな選手の活躍のウラでは、当然その夢舞台に届かず終わる選手たちも多く存在する。そんな彼らは、行き場を失った「夢」とどう折り合いをつけるのだろうか。現在は多くの人気漫画の原作も担当する編集者となった「元ランナー」に話を聞いた。《NumberWebノンフィクション全2回の2回目/最初から読む》

◆◆◆

 結果的に言えば、鍵谷亮は最後まで箱根路を走ることができなかった。

 3年目、4年目ともに鍵谷自身は予選会で好走したものの、いずれもチームが次点で落選に終わったからだ。特に4年目は「トップ通過もありうる」とまで思っていただけに、その衝撃は大きかった。

「4年目は絶対通ると思っていました。夏合宿でも練習の質がそれまでと全然、違いましたから。ところがふたを開けてみたら全然、予定通りにいかなくて。自分もチーム内3位で、ギリギリ学連選抜にも入れず……縁と言ってしまえばそれまでなんですけど、ホント、箱根に縁がなかったんだと思います」

 鍵谷にとっての最後の箱根路の記憶は、3年時に務めた3区の走路員だった。

 沿道に押しかける観客たちを制しながら、ふとコースへと目をやる。自身が走れなかった憧れの箱根路を、ランナーたちが颯爽と駆け抜けて行った。

卒業後はまさかの「漫画編集者」に…?

 卒業後、鍵谷はスパッと競技から離れた。

 実業団へ進む選択肢ももちろんあった。だが、これまで陸上漬けだった反動から、他の世界を見たい気持ちが大きくなったという。そこで、もともと興味のあったエンターテイメントの世界への就職を考えた。

「あだち充さんの作品とか『ヒカルの碁』とか、もともと漫画は大好きで。大事な試合の前とかには読んでいたんです。それでモチベーションが上がることもあったし、『あぁ、他人の人生にプラスの影響を与えられるのって良いなぁ』と漠然と思って、漫画がある出版社を受けた感じです」

 結果的に鍵谷は大手出版社に入社。編集者としてのキャリアをスタートした。

【次ページ】 「競技で培った能力」が仕事に活きる?

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