甲子園の風BACK NUMBER
酷暑でも球児の本音「甲子園だけが批判される」「クーリングタイムは正直、逆効果」「試合の流れが…」感じる“世間や高野連とのギャップ”
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/29 17:00
酷暑の中で開催された、夏の甲子園。朝・夕方2部制、クーリングタイムなど日本高野連は採用しているが、現場の球児の声は?
実際、関東一の試合でも6回表に決勝点を奪われている。
明徳義塾の先発・池崎安侍朗投手は先頭打者に対して明らかなボール球が続いて、この試合2つ目の四球を与える。すかさず、馬淵監督がマウンドに伝令を送る。しかし、続く打者にバスターを決められて一、三塁とピンチが広がり、後続に勝ち越しのタイムリーヒットを許した。馬淵監督は試合後、こう話している。
「6回のクーリングタイムからの守り。うちも相手と同じように6回に点を取ったことがあります。6回は先攻の方が良いと感じています」
「クーリングタイム明けは体が冷えてしまう」
この試合、明徳義塾は失点した6回に二塁手・平尾成歩主将が交代している。好守備を見せた直後に足がつったためだった。
今大会ではクーリングタイム明けに足をつる選手が目立った。選手間では「クーリングタイム明けは体が冷えてしまう」、「10分間の過ごし方を変えても上手くいかない」といった声が上がる。
そして、選手から聞こえてくるのは、クーリングタイム自体に反対する意見だ。誹謗中傷の対象となる可能性があるので実名は避けるが――ある選手が本音を明かす。
「クーリングタイムは正直、必要ないです。体が冷えて動きが悪くなりますし、けがをしてしまいそうな感じがするので、チームメートとは逆効果と話しています。体のことを心配していただけるのはありがたいですが、自分たちは暑い中で試合をする前提で普段の練習をしています。試合よりも練習の方が何倍もきついので、クーリングタイムがなくても大丈夫です。試合中に水分補給やベンチで休む時間もありますから」
猛暑の屋外に試合…野球だけではありません
高校野球の大会を真夏に開催する是非を問う声や、甲子園ではなくドーム球場に変更すべきという声にも違和感があるという。
こう世論の声に反論する。
「猛暑の屋外で試合をするのは野球だけではありませんし、野球も小学生や中学生の全国大会が真夏に開催されています。甲子園だけが批判されたり、議論の対象になったりするのはおかしいと感じています」
クーリングタイムが必要ないと指摘する球児に共通しているのは、高野連や世間とのギャップである。