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《パリ2024パラリンピック注目選手》全盲、車いす…困難を乗り越えて金メダルを目指す日本パラスポーツ界の“超人”たちの激闘を目撃せよ!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2024/08/21 10:00
左から陸上競技400m(T52)・佐藤友祈、水泳100mバタフライ(S11)・木村敬一、車いすテニス・上地結衣
やがて転機が訪れた。映像で観たロンドン2012で車いすの選手が走る姿に「かっこいいな」と思った。自分もあの舞台に出たいと考え、行動を起こした。それが今日に結びついている。
世界王者となった佐藤だが、昨年の世界選手権で1500mこそ3連覇を達成したものの400mでは2位に終わった。しかも保持していた世界記録も破られた。
「本命の400mでは金メダルと世界記録を明け渡す結果となりました。久しぶりの敗北、とても悔しく、言葉になりません。53秒台の世界記録を出して来年、必ず借りを返します」
そう誓った今年の世界選手権では開幕を前にレーサー(競技用車いす)が破損、旧車を使わざるを得ず、雪辱は果たせなかった。王者の誇りを取り戻すために、パリの地に向かう。
車いすテニス・上地結衣は悲願の金メダルを掴めるか
日本の車いすテニス女子プレイヤーと言えば、上地結衣をおいてほかにない。日本の柱であるのはむろんのこと、長年にわたり世界のトップで活躍を続ける。
全豪オープン、全仏オープン、ウインブルドン、全米オープンの「グランドスラム」ではシングルスで計8度優勝。ダブルスでは21度の優勝を数える。この数字は彼女がトッププレイヤーの一人であることを雄弁に物語る。
先天性の潜在性二分脊椎症であった上地は11歳のとき、車いすテニスを始めた。その後頭角を現し、高校3年生でロンドン2012に出場する。
このとき、最初で最後のパラリンピックにしようと思っていた。でも初めての大舞台で目にした光景はその思いを覆した。大勢の観客の声援、何よりも各国のトッププレイヤーのプレーに心を打たれ、「また出たい」と思った。
出たいと思うとともに、やるからには突き詰めたいと考えた。そのためにはテニス一筋に打ち込むしかない。だから就職も進学も捨てて、テニス1本に絞って生きていくことを決めた。
続くリオ2016のシングルスでは銅メダルを獲得。東京2020ではシングルスで銀メダル、ダブルスでも銅メダルを手にした上地だったが、シングルス決勝のあと、涙を流した。
「やりきったと思います。でも負けるのが悔しいので」
テニスに懸けて生きてきたからこそ、メダルを手にしても喜べなかった。パリ2024は、まだ手にしていないものを求めて臨む大会だ。
より強くあろうと競技に打ち込んできた上地には車いすテニスを通じて伝えたい思いもある。東京2020を前に上地は語っている。
「自分のプレーを観て元気になっていただけたら」
コロナの影響が残る中での開催だったこともあるだろう。でもそれ以前から、いつも観る人の力になるプレーを、という思いを抱いてきた。パリ2024はそのための舞台でもある。
木村、佐藤、上地はそれぞれの人生を歩み、今、パリ2024を迎えようとしている。木村と佐藤は映像に触発されて競技の世界に飛び込んだ。上地は中継を通じて伝えたい思いがある。上地に限らない。彼らのプレーは意図せずとも、きっとなにかしらのメッセージを伝えるはずだ。
パリ2024の舞台を伝える映像の中に、強い意志とともに困難を打破してきた彼らの姿がある。人生を懸けて競技に取り組んできた屈指のアスリートたちの輝きを楽しみにしたい。
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