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「金メダル最有力候補」須崎優衣25歳まさかの初戦敗退…いったいなぜ?「あれ、展開が動かない…」レスリング会場で記者が感じた“ある異変”
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGetty Images
posted2024/08/07 17:35
金メダルの大本命としてパリ五輪を迎えたレスリング女子50kg級の須崎優衣。1回戦でインドのビネシュ・フォガトに敗れ、五輪連覇の夢はついえた
大会前には“靭帯損傷”も…本人は言い訳を口にせず
筆者はパリ五輪前、「須崎が練習中に靱帯を損傷し、ギプスで固定する生活を2週間ほど続けていた」という話を耳にしたことを思い出した。そのせいかどうかはわからないが、パリのマットに立った須崎の右ヒジの周囲にはテーピングが巻かれていた。ケガのせいで、パリまでに「やりきった」と思えるだけの最終調整を積むことができなかったのだろうか。
応援してくれた関係者やファンに対して須崎は「ごめんなさい」と頭を下げるばかりだったが、大番狂わせを演じたビネシュの作戦通りのレスリングも称えられるべきだろう。須崎を破った勢いで、その後も彼女は決勝まで勝ち上がっていった(※ビネシュは現地時間7日朝の計量で体重超過のため失格。他選手が繰り上がった結果、須崎は不戦勝扱いで3位決定戦に直行することになった)。
振り返ってみれば、須崎は過去に何度もケガを乗り越えてきた。昨年9月の世界選手権で優勝したときには試合の3週間ほど前にヒザを負傷し、一時は足を引きずるほどの状態だった。それでもパリ五輪への出場切符がかかった大会だっただけに、欠場するという選択肢はなかった。
結果を残せばケガにも触れられるが、そうでなければほとんど明かされることはない。果たしてビネシュ戦後、須崎の口からケガについて語られた言葉は一言たりともなかった。
「相手の戦術にうまくハマってしまって、自分の良さが出せなかった。何もかも足りなかった。(打開策も考えたが)行ききれなかった」
東京五輪の金メダリストとしてのプライドもあるだろう。須崎の口から連覇を逸した理由が語られるまでには、もう少し時間がかかりそうだ。