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お金でも名誉でもなく…松山英樹(32歳)はなぜ“五輪出場”に葛藤していた?「出るからには頑張る」目つきが変わった男子ゴルフ初の銅メダル
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKeyur Khamar/PGA TOUR via Getty Images
posted2024/08/07 06:00
パリ五輪で男子ゴルフ界初の銅メダルを獲得した松山英樹(32歳)。丸山茂樹監督もこの笑顔
バカでかい重しを背負ったまま、松山はフランス・パリで勲章を首にかけた。3年前、東京で7人のプレーオフに敗れて逃した銅メダル。4日間72ホールの戦いぶりは、世界屈指のウェッジワークをもとにした優れたディフェンス面以上に、どんなに難しいとされるホールでも立て続けにチャンスを作るアイアンのショット力が際立った。
一緒に表彰台に上がった世界ランキング1位の米国・スコッティ・シェフラー、英国のトミー・フリートウッドもそれぞれ、母国の期待と責任を同じくらい感じてきた選手たちだったはずだ。フランスを去ればすぐにPGAツアーでまた競い合う3人の互いを労うような表情が印象的だった。
飛躍の年になりそうな男子ゴルフ界
銅メダルは普段ゴルフに親しみのない層にも強く訴えかけるものがあるが、そもそも2024年は日本の男女ゴルフ界にとって、史上まれにみる輝かしい年になる可能性がある。
年明け間もない2月、ロサンゼルスでのPGAツアー「ジェネシス招待」で松山は約2年ぶりに優勝し、アジア出身選手として最多の通算9勝目を飾った。首に背中に腰、度重なる故障を乗り越えた日本のエースの復活が起爆剤になったかのように、前後して、海の向こうで複数の日本人選手が飛躍している。
星野陸也がドーハでのカタールマスターズを制したのは松山が勝った前週のこと。昨年9月にフランスオープンを制した久常涼に続き、日本人として史上4人目のDPワールドツアー(欧州ツアー)優勝者になった。
3月初旬、アジアンツアーと豪州ツアーの共催試合・ニュージーランドオープンでは幡地隆寛が優勝した。国内屈指の飛ばし屋としてならす30歳が日本、海外ツアーを通じて初勝利をマーク。同じ月の下旬には昨年の日本ツアー賞金王・中島啓太がヒーローインディアンオープンで、参戦1年目にして欧州ツアー初優勝を達成。さらに桂川有人が日本ツアーと欧州ツアーの共催試合・ISPS HANDA選手権で続き、シーズン半ばにして欧州ツアーでは今年3人目の日本人チャンピオンが誕生した。
6月初旬には25歳の大西魁斗がUNCヘルス選手権で優勝。松山らがプレーするPGAツアーの下部ツアーでの初タイトルは将来に繋がるものだ。