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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「キャプテンは石川祐希ですけど、大ボスは関田誠大」「2人の言い合いは日常だった」盟友・今村貴彦だからわかる、天才セッターが最後に託す場所
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahiko Imamura
posted2024/08/02 11:56
中央大で関田誠大、石川祐希と共にプレーした今村貴彦。2人の関係性を明かした
昨年8月、今村はパナソニック(現・大阪ブルテオン)からレンタル移籍という形で、チェコ1部リーグのクラドノへ渡った。出場機会はもちろん、さらなる成長を求めての決断だったが、苦手だと思っていた守備面で高い評価を得た。新たな発見と刺激しかない異国での生活は、新鮮である一方、食事やケアも望む時に受けられた日本と異なり大変なことも多く、だからこそ「石川がいかにすごいかを実感する」と繰り返す。
「(今年の)3月にイタリアへ行ったんです。(石川が在籍した)ミラノとペルージャの試合を見て、フルセットでミラノが勝って祐希がMVP。ここで点が欲しいというところで祐希に上がってきて、全部決める。めちゃくちゃ頼もしいし、レストランへ行けばイタリア語がペラペラだから注文も冗談も全部イタリア語。大人になったな、と思ったし、かっけーな、って思いますよ(笑)」
今村は今季もクラドノと契約し、8月には渡欧する。現在は大阪ブルテオンの練習に参加するが、練習前に体育館の大型テレビで流れる日本代表のプレー集を見るたび、気持ちを奮い立たせている。
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「強くて、面白い。僕はそれだけで十分だと思うけど、世間の注目や関心度は異常なぐらい盛り上がっているじゃないですか。世界で勝つのはそんなに簡単じゃないし、甘い世界じゃないんだよ、と思うけど、だからこそ僕らは頑張れよ、と応援する気持ちしかない。サーブもスパイクもがんがん攻めてほしいし、たとえその結果負けることがあったとしても、やることをやったうえで相手が上だったならしょうがない。とにかく攻め切ってほしいです」
「関田は祐希に託すんじゃないかな」
上位8チームが進むファイナルラウンドへ進出し、目標と掲げる金メダルを獲得するためには、常に勝利が求められる。関田や石川はさらなるプレッシャーを背負うことになるが、そんな重圧に屈するメンタルではないことは、共に戦って来たからこそ理解している。
「ここ、という時が来たら、関田は祐希に託すんじゃないかな。たとえ(ブロックに)捕まっても、祐希、祐希、祐希、と3本連続で使い続ける。それぐらいは関田ならやるし、祐希なら決めます」
最高の時間だったと振り返る中大時代、心残りがひとつある。最後の全日本インカレでビクトリーポイントを関田が託してくれたのに決めきれなかった。優勝に導く1本は石川が決めた。
連覇は嬉しかったけれど、ボスの関田には叱られた。
「最後だからヒコ(今村)に上げたのに、何で決めてくれねーんだよ」
あの時と同じように。俺の代わりに、祐希がパリで。関田の最高のトスを決めてくれ――。
(全2回/前編から続く)
◆第1回では、石川祐希の高校・大学の同級生である武智洸史(広島サンダーズ)のインタビューを公開中です。