互いに切磋琢磨しながらチャンスをつかむべく努力する。ずっと続くと思っていた日々の終焉は突然訪れた。パナソニックに入って3シーズン目を迎える前の束の間のオフ、宮崎に帰省していた今村のもとへ関田から移籍を知らせる連絡が届いた。

「僕からしたら、突然別れ話をされた恋人の気分（笑）。大げさじゃなく固まりました。それぐらい僕にとって、関田は特別でした」

ともに切磋琢磨した時間を過ごした今村貴彦と関田誠大。パナソニックの同期には日本代表の山内晶大もいる（本人提供）

　一人の選手として飛躍と成長のきっかけを求めるのは当然のこと。決断したなら応援するのみ、と「離れても一緒に頑張ろう」と返信した。新天地での挑戦を機に、関田は日本代表の正セッターの座をつかみ、東京五輪にも出場した。

　しかも、その代表チームを主将として率いていたのは、中大時代の後輩である石川だ。トスに関しては「全部任せていた」という今村と違って、「ここでほしい」「もっとこういうトスがほしい」と遠慮なく関田にも主張する。

日常だった石川と関田の言い合い

　試合中や練習中も「自分のことで精いっぱいだった」という今村の横で、関田と石川が言い合うこともしょっちゅうで、「むしろ僕らが後輩の石川に気を遣うことのほうが多かったし、関田とも『今日、祐希怒っているよね』とよく話していた」と笑う。

　存在感も実力も、いわば規格外の選手。当時の今村は「考えもしなかった」という在学中のイタリア挑戦を皮切りに、日本を飛び越え、今や世界と渡り合う選手へと成長を遂げた。

大学生活最後の大会となった天皇杯で、準々決勝に敗れ涙する関田誠大と今村貴彦。後輩の石川祐希もタオルに顔を沈めた　©︎AFLO SPORT

「顔つきや振る舞いも変わったし、点を決めて吼える回数も明らかに増えた。祐希の覚悟が見えますよね」

【次ページ】　今季もチェコでプレーする今村