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なぜ関田誠大のトスは打ちやすい?「トリッキーにも見えるけど…」元日本代表・清水邦広が語る、味方だけがわかる天才セッターの“絶妙な匂わせ”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2024/08/01 17:02
絶大な信頼を寄せられるセッター関田誠大(30歳)。不遇時代を知る清水は、記憶に残る食事会のエピソードを明かした
逆境から這い上がった強さもさることながら、関田の武器はアタッカーを活かした多彩なトスワーク。特にミドルの使い方に関しては世界でもトップクラス。時に味方の虚を突くようなタイミングで上げるのも関田に至っては普通のこと。
関田のトスは本当に打ちやすいの? 清水は、ミドルブロッカーの選手にそうたずねた時のエピソードを嬉しそうに語る。
「関田のトスって『そこからクイック上げる?』って、トリッキーにも見えるんです。でも、ミドルの選手はみんな『打ちやすい』って。関田がトスを上げてくる時には、“ここで上げるよ”という味方にしかわからない“匂わせ”をするらしいんですよ」
ローテーションや場面を問わず、満遍なくさまざまな攻撃を使ったかと思えば、ここぞという場面では同じ攻撃を繰り返して選択する。自分が相手だったら絶対翻弄されて終わる、と清水は笑う。
「相手からすればどの攻撃が来るかわからないし、味方には“上げるよ”と絶妙に匂わせて(笑)、正確なトスを上げてくる。そんなセッターは関田しかいません」
東海大でセッターに専念した深津旭弘
唯一無二とも言うべき“重要人物”の関田と共に、37歳で五輪初出場するもう一人のセッターが深津旭弘だ。関田とポジションを争った深津英臣の兄にあたり、清水とは東海大の1学年違い、先輩後輩の間柄でもある。
清水が「何よりの魅力は人柄」と称する深津がセッターに専念するようになったのは、大学から。小学生の頃からセッターとして技と頭脳を磨いてきた関田とは対照的に、深津は星城高時代からスパイカーとセッター、どちらもこなす器用さとセンスも備えたタイプだった。
だから当然と言うべきか、大学時代の深津のトスは両サイドをベースにしたシンプルな組み立て。卒業後に進んだVリーグのJTサンダーズ広島がチーム戦術としてオポジットの外国人選手を多用するスタイルをとっていたため、両サイドの攻撃に偏る場面も少なくなかった。
だが、その責任は自分にあるかもしれないと清水は言う。