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「決勝に行くぞ」石川祐希はなぜ“ギアを上げた”? 心配になるほど吠えた主将が植え付けたかった頂点のイメージ〈男子バレー五輪メダルの序章〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byVolleyball World
posted2024/07/02 11:09
VNLではベストアウトサイドヒッターに選出された石川祐希(28歳)。「ユーキイシカワ」がSNSでトレンド入りした
この2024年、もっとも重要な大会がパリ五輪であることは言うまでもない。
今年のVNLは、決勝後、五輪開幕までの期間が1カ月弱しかないこともあり、チームによって大会の位置付けが違っていたのは事実だ。
五輪出場権をまだ得られていなかったチームは、予選ラウンド終了時の世界ランキングによって五輪出場の可否が決まるため、1週目から主力を揃えて全力で臨んだ。一方、出場権を手にしているチームの中には、今大会の成績や世界ランキングよりも五輪に向けたコンディショニングを重視したと思われるチームもあった。
勝ち進めば「五輪への調整期間が短くなる」
昨年のパリ五輪予選で五輪出場権を手にしていた日本にも選択肢があった。その中でフィリップ・ブラン監督は、4月末までイタリア・セリエAで戦っていた石川と高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)を第1週のブラジル大会には帯同させず疲労の回復を優先し、その上でチーム力を高めながら五輪の組み合わせ抽選で有利な世界ランキング5位以上を維持するという目標を立てた(大会開幕時は4位)。
ファイナルラウンドについてはジレンマをのぞかせていた。
「VNLのファイナルラウンドは五輪と似た形式で行われるため、五輪にプラスの影響もあるかもしれない。ただマイナス点は、マニラで予選ラウンド第3週を戦った直後に、ファイナルラウンドが行われるポーランドに移動しなければならず疲労が蓄積されること。五輪までの調整期間も短くなる」(ブラン監督)
日本はメンバーを入れ替えながらもその都度出場した選手たちが活躍し、9勝3敗の4位でファイナルラウンドに進出した。しかも予選ラウンド終了時の世界ランキングは過去最高の2位に。五輪の抽選でトップシードに当たる第1ポットに入るという最高の結果を得た。