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大谷翔平が発言「彼にはかなわない、負けたと思いました」青森にいた“怪物中学生”…なぜプロ野球を諦めたのか? 本人語る「大谷と初めて話した日」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byGetty Images
posted2024/06/29 11:00
大谷翔平に「かなわない」と言わしめた大坂智哉の今
〈長者レッドソックスに大坂君というピッチャーがいて、これはすごかった。そのときはもう、かなわない、負けたと思いましたね。僕よりでっかくて、体すげえな、すんげえ力だな、すげえ球も投げるなと思って、上には上がいるんだなと……〉
ところが、17年のときを経て、立場は完全に逆転してしまった。最初に会う人物は、大坂を置いて他にいないと思った。
大坂と大谷「中1夏の出会い」
何気ないやりとりだったそうだ。
「ホームラン、何本ぐらい打ってるの?」
身長168センチでがっちりとした体格だった一塁手の大坂は、ファーストベースにやってきた170センチ以上はあろうかという、しかし、大坂とは対照的にひょろりとしていた同学年の大谷にこう尋ねた。
大谷はほとんど表情も崩さずに淡々とした口調で返してきた。
「35、6本くらいかな」
大坂のリトルリーグにおけるホームラン数は通算28本だった。ただ、大谷のホームラン数を知っても別段、すごいとは思わなかったという。
バケモンとバケモンの邂逅――。それは2007年6月3日、中学1年生の夏のことだった。全日本リトルリーグ野球選手権東北連盟大会の決勝で2人は初めて相まみえた。場所は、福島県郡山市にある2万人弱収容の開成山野球場(現・ヨーク開成山スタジアム)のフィールド上だった。
プロ野球の世界において2007年と言えば、入団3年目で本格化し始めたダルビッシュが沢村賞を受賞し、ルーキーの楽天・田中将大が11勝を挙げ新人賞を受賞した年でもある。
青森にいた怪物…大坂の評価
大坂は青森県八戸市にあるリトルリーグのチーム、長者レッドソックスの「四番・エース」だった。当時、八戸・青森リーグには6チームが所属していた。長者レッドソックスは、その中で抜きん出た存在だった。理由は簡単である。大坂がいたからだ。
長者レッドソックスのライバルチームだった青森山田リトルの元エースで、大坂と同学年だった本間康暉が思い出す。