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将棋PRESSBACK NUMBER
「あまり気にせず今後も」藤井聡太21歳八冠崩しに成功「決死の顔面受け」新叡王・伊藤匠に感服…6歳時、短冊に書いた“七夕の願い”とは
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/06/24 11:01
叡王戦第5局の感想戦。伊藤匠、藤井聡太という21歳の気鋭の棋士は、今後も名勝負を繰り広げるはず
伊藤新叡王「タイトル戦は全体的に苦しい将棋が多く、ひとつ結果を出せて良かったという気持ちです。今後も藤井さんとタイトル戦で戦えるように頑張りたい」
藤井七冠「終盤でミスが出てしまう将棋が多く、この結果はやむをえません。タイトル戦で敗れるのは、時間の問題と思っていました。あまり気にせず今後も頑張りたい」
藤井は昨年の10月11日に王座を獲得し、「八冠」の偉業を達成した。その期間はずっと続くと思われたが、タイトル独占は254日で終わった。七冠に後退しただけで、将棋界の第一人者に変わりはない。
ただ不敗神話が崩れたことによって、自分も勝てそうだと思う棋士はいるかもしれない。
大山康晴と升田幸三、中原誠と米長邦雄、羽生善治と谷川浩司、森内俊之――という関係のように、大棋士には切磋琢磨する良きライバルがいたものだ。藤井聡太にも伊藤匠というライバルがようやく出現したが、世代が近い藤本渚五段(18)、奨励会員の山下数毅三段(16)らが台頭してくると、さらに活性化するだろう。
伊藤が語ってきた“藤井への思い”
伊藤は5歳のとき、父親からのクリスマスプレゼントを怪獣のおもちゃに替えて将棋の盤駒を希望した。それが棋士を目指す端緒となった。以後の将棋人生は、次に列記したエピソードが示すように、同学年の藤井の存在がいつもあった。
小学3年のときに将棋大会で藤井に勝って大泣きさせた(伊藤に記憶はないという)。藤井が14歳2カ月の最年少記録で四段に昇段してデビュー戦から連勝していたとき、自分が情けなく感じて「早く負けてくれ」と思った。高校1年のときに進学校を自主退学したのは、藤井の活躍を見て自分のふがいなさを痛感し、将棋に専念するためだった。
これまでのコメントを振り返っても、藤井という存在が大きかったことを感じさせる。