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“中学生でプロとスパー”井上尚弥の衝撃「こんな動きをする子が…天才だ」元世界王者・川嶋勝重に聞く「大橋ジムが“最強”を生み出せる理由」
posted2024/06/24 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Yuki Suenaga
3人の現世界王者を筆頭に有望選手を数多く抱える大橋ジムで、最初に世界チャンピオンとなったのが川嶋勝重だ。20歳でボクシングを始めたオールドルーキーは決して才能に恵まれていたわけではないが、粘り強い努力で大橋ジムに待望の世界王座のベルトをもたらした。隆盛を極める大橋ジムの土台を作った川嶋の物語をひもといていく。(全2回の2回目/前編へ)
川嶋勝重の背中を見て…八重樫東ら“第二世代”が入門
川嶋勝重が世界タイトルを獲得したのが2004年6月28日のこと。その数カ月後、1人の大学生が大橋ジムの門を叩いた。拓殖大の八重樫東である。八重樫は高校時代にインターハイ、大学では国体で優勝。大橋ジムに大学出のアマチュア選手が入門するのは初めてだった。現在は大橋ジムでトレーナーを務める八重樫がその理由を語った。
「トレーナーの松本(好二)さんはアマチュアで活躍してプロで世界挑戦までしました。アマチュアを知っているトレーナーの存在は、アマ出身の自分にとって大きかった。当時、そういうトレーナーはまだあまりいなかったと思うんです。しかも松本さんは叩き上げの川嶋さんを世界チャンピオンに育てた実績もある。大橋会長のマッチメークの力もある。このジムには力があるんじゃないかと感じました」
八重樫と歩みを合わせるかのように、同期で東農大出身の岡田誠一も入門。さらに1学年下の細野悟が法政大を中退して大橋ジムに入ってきた。3人は示し合わせて大橋ジムを選んだわけではない。理由はいろいろあろうが、川嶋が世界チャンピオンになったことは大きかった。
20歳でボクシングを始めた川嶋にとって、高校、大学でみっちりボクシングをしてきた大学出のホープたちはまぶしかった。川嶋が当時を振り返る。
「そりゃ違いますよね。自分なんか4回戦とか6回戦のころ、スパーリングに来る横浜高の高校生に負けてましたから。もちろんプロとアマは違いますし、試合になれば別なんでしょうけど。やっぱりアマチュア出身の選手は技術が高かったですね」