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「母への永遠の愛を滑りたいな」浅田真央が明かすアイスショー『Everlasting33』に込めた“愛”「誰も見たことのない景色を届けたい」
posted2024/06/15 17:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
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「誰も観たことのない景色を届けたい。それが、このショーのスタートでした」
2017年の引退後、すでに2つの全国ツアーで手応えを感じていた。ファンへの感謝をこめた『浅田真央サンクスツアー』と、プロとしての進化を示す『BEYOND』。どちらも現役時代の曲を再演出した、ファンの期待に応えたショーだ。だからこそ「次は新しいものを」という思いはつのっていた。
実は、第3弾への準備は『BEYOND』の期間中から始めていた。舞台となる立川ステージガーデンを見学し、予約していたのだ。
「舞台に立たせていただいて、客席を見た瞬間に『ここなら、まだ誰も観たことのないモノが作れる』と確信して、すぐに予約しました(笑)」
既存の舞台を活かしながら、せり出したリンクを設営する『劇場型』。1階席からは見上げるような、新たな形態である。
さらに昨年9月には、アメリカとアルゼンチンを巡り、各地のエンターテインメントを鑑賞。さまざまなアイデアを吸収しながら、ショーの骨格を考えた。
「やはりアイスショーの枠を超えたいという気持ちがあり、新しい分野を取り入れることにしました。それが、エアリアル(空中演技)と、タップダンス、そしてスケート靴を脱いでのダンスです。エンターテインメントの1つとして、新たな表現も楽しんで欲しいな、と思いました」
エアリアルは、ラスベガスでシルク・ドゥ・ソレイユの超難度の技を見て、刺激を受けていた。
「柴田嶺君と『一緒にエアリアルやりたいね』という話になり、決まりました。3カ月ほど専門の方に習い、嶺君が素晴らしいパフォーマンスを身に付けてくれたので、一緒にスペシャルな世界観を作り上げることが出来たと思います」
エアリアルは、ショーの前半の目玉。浅田と柴田が、輪や布を使って、さまざまな空中技を披露する。命綱もつけない危険度の高い演目に、観客からのどよめきが止まらない一曲となった。
「ミュージカル映画のような舞台をやりたい」
またタップダンスの第一人者であるHideboHとの共演にも挑んだ。観客通路やリンク内の移動舞台に乗り、2人が軽快なタップを披露する。通路を使った演出は、アイスショーでは実現できなかったものの1つだ。