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藤井聡太21歳が「独創的で豊かな発想力」と絶賛…山崎隆之43歳「藤井さんを悩ませたい」15年ぶりタイトル挑戦“山ちゃん”とは何者か
posted2024/06/13 06:01
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
日本将棋連盟
ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負は、藤井聡太棋聖(21=竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将を合わせて八冠)に対して、山崎隆之八段(43)が挑戦している。藤井が棋聖を防衛して5連覇すれば、自身初の永世称号(永世棋聖)を取得する。山崎がタイトル戦に登場するのは2回目で、2009年の王座戦五番勝負で羽生善治王座に挑戦して以来。15年のブランクは歴代2位の長さになる。
山崎は近年、タイトル経験者と若手精鋭の間で埋もれていたが、独創的な指し方を駆使してタイトル戦の大舞台に登場した。「山ちゃん」の愛称でファンから愛される山崎将棋の特徴、公式戦での好調の要因、打倒藤井の決意などについて、田丸昇九段が解説する。また、羽生に挑戦したタイトル戦、2016年に電王戦二番勝負で最強将棋ソフト『PONANZA』(ポナンザ)との激闘も合わせて紹介しよう。【棋士の肩書は当時】
15年前、王座戦17連覇の羽生善治に挑んだ日
山崎八段は、1992年に森信雄七段門下で奨励会(棋士養成機関)に入会し、98年に四段に昇段して17歳(当時は最年少)で棋士になった。やがて頭角を現すと、2000年に新人王戦、05年にNHK杯戦で初優勝した。盤外では美青年棋士として注目され、女性ファンが多かった。
2009年の第57期王座戦五番勝負で、17連覇していた羽生善治王座(当時38)に対して山崎七段が初挑戦した。山崎は羽生将棋について、以下のように率直に語っていた。
「私はNHK杯戦の決勝で羽生先生に勝ちましたが、持ち時間の長い対局で勝ったことがありません。終盤が桁違いに強く、完璧に指してきます。そういう強みがあるから、その手前の局面で落ち着いて指しています。それから、私の将棋の本質や弱点を見抜かれているような気がします。以前はタイトルを獲れたらいいな、という漠然とした気持ちでした。でも今は生きのいい若手棋士が多く出ている状況なので、タイトルを獲りたい気持ちに変わりました」
山崎は2局目までに1勝を目標にした。
実際に第2局の中盤では勝機があったが、見落としがあって敗れた。さらに第3局も敗れ、王座戦は3連敗で敗退した。山崎は得意形の将棋を用いて奮闘したが、羽生に力負けする結果となった。
vsコンピューターの電王戦、あえて事前研究せずに
その山崎が再び脚光を浴びることになったのは、2015年に創設された叡王戦(当時は非タイトル戦)である。