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藤井聡太21歳が「独創的で豊かな発想力」と絶賛…山崎隆之43歳「藤井さんを悩ませたい」15年ぶりタイトル挑戦“山ちゃん”とは何者か 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2024/06/13 06:01

藤井聡太21歳が「独創的で豊かな発想力」と絶賛…山崎隆之43歳「藤井さんを悩ませたい」15年ぶりタイトル挑戦“山ちゃん”とは何者か<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

第95期・棋聖戦第1局。藤井聡太八冠に挑む山崎隆之八段は、将棋ファンからの人気も高い

「挑戦できると思っていなかったので、不思議な感じです。藤井さんとは実力差があるのは分かっていますが、見ている方が最後まで勝負が不明と思うような将棋を指したい。踏み込んだ指し方で勝てば、ほかの棋士の希望になるでしょう」

 あるスポーツ紙の記事によると、山崎は今年3月に左目の視野が欠ける緑内障の疑いがあると診断されたという。手術しても完治はなく、現在は点眼薬で進行を遅らせている。そんな状態なので、最後の大舞台と思って臨むそうだ。

「独創的で豊かな発想力」と藤井が称える山崎将棋

 藤井と山崎の公式戦での過去の対局は2局ある。2018年9月の王位戦予選と、21年7月の竜王戦・決勝トーナメント。前者は山崎が藤井の攻めを柔らかく受け止め、機を見て反撃して寄せ切った。後者は藤井が激しい寄せ合いを制して勝った。

 AI(人工知能)による形勢評価において、藤井将棋は右肩上がりで良くなるのが特徴で「藤井曲線」と呼ばれる。一方の山崎将棋は一進一退の末に逆転するW字が特徴で「山崎曲線」と呼ばれる。どの曲線になるかが勝負のカギとなる。

 なお、山崎は以前に奨励会の幹事を務めていて、藤井は1級時代の2014年から16年に四段に昇段するまで時期が重なっていた。奨励会の幹事と会員が後年にタイトル戦で対戦するのは珍しい。

 棋聖戦五番勝負第1局は6月6日に千葉県木更津市のホテルで行われた。藤井棋聖と山崎八段は前夜祭で次のように挨拶した。

藤井「山崎八段は独創的で豊かな発想力に支えられた将棋を指します。未知の局面における判断力や対応力が問われるシリーズになると思います」

山崎「藤井棋聖に挑戦できるのは、棋士として本当にうれしいです。思い切った将棋を指して、五番勝負を戦い抜きたいと思います」

第1局、藤井は本意ではなかったようだが…

 第1局では振り駒が行われ、山崎の先手番に決まった。戦型は相掛かり模様。山崎は2筋で飛車先歩交換をできるのに、保留して中住まい玉にする駒組み手順を進めた。先手番の優位を失うが、長い戦いの中で独自の展開を目指したようだ。観戦したある棋士は「少し悪くならないと力が出ない」と、苦笑しながら山崎将棋を評した。

 先に動いたのは藤井で、△3五歩以下の順で攻めた。

【次ページ】 「のびのびと指し、藤井さんを悩ませたい」

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