武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
“ご意見番”武蔵丸が現役横綱大関に苦言「昔の横綱大関は怒ってるよ?」「休場続きの照ノ富士や貴景勝は“引き際”も考えないと」
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/30 17:01
5月場所初日、横綱照ノ富士(左)は攻めたものの、大の里にすくい投げで敗れた。照ノ富士は翌日から休場
千秋楽、最後まで優勝争いを面白くしてくれた阿炎。大の里相手に何もさせてもらえなかった感じ。ちょっと遅かったね。亡くなった師匠(元関脇寺尾)の棺に初優勝の時の表彰状を入れたと耳にしていて、「やってくれるはず」と思ったんだけどな。「阿炎行け! 寺尾のために行け!」と力が入っちゃったよ。でも関脇の地位での10勝ということで、大関獲りスタートになるね。師匠の地位を超えて、これから天国の師匠に恩返しだよ。
「なんでこの2人に三賞をあげないの?」
11勝した大栄翔も、9勝を挙げた平戸海も良かったね。なんでこのふたりに三賞をあげないの? おかしいよ。平戸海は大きくない体で真っ向勝負してさ。きっぷのいい相撲が気持ちいいね。まず、大の里に勝ってるんだから殊勲賞だろ? これ以上肥ると動けなくなるし、スピード勝負の相撲だから、体重に気を付けて今の相撲を磨けばいいぞ。今場所の平戸海には、僕から殊勲、敢闘、技能の三賞全部と、おまけで”マルちゃん賞”もあげちゃうよ。
優勝争いに名をあげた湘南乃海だけど、体だけじゃないかよ~。相撲内容が悪くて、相撲も逃げてばっかり。立ち合いから、体が左右に流れてる。上位陣とやるのはまだ難しいね。せっかくいい体を持ってるんだから、まずは体を思い切りぶつけていくだけでいいんだよ。そこからの流れを作っていく。もったいないぞ?
高安も、腰痛で途中6日間を休場しちゃったけど、プレッシャーのない場所は強いんだよね。大の里にも大関豊昇龍にも土をつけてる。でも、相手に合わせて相撲を取っているんだよね。自分の相撲を取り切っていないのね。持って生まれた運もあるけど、初優勝はまだ遠いかな……。
「今の相撲界には、突出して強い人がいない」
今の相撲界には、突出して強い人がいない。だから誰にでもチャンスはあるんだ。相手に合わすのではなく、「自分の形に持ってゆく」「自分の相撲を取り切る」。何も器用なことを、無駄なことをしなくていいんだ。相撲の基本中の基本である「当たって押す」。今一度、ここを見直して稽古してよ。
2場所続けてちょんまげ力士の優勝だったけれど、尊富士も大の里も、前に出るという基本を大事にした“シンプルな自分の相撲”を取ってるところがいいんだよね。
今後も番付関係なく、「一番頑張った人が優勝」だよ。6月は巡業もないし、体を休めて、また7月の名古屋場所でいい相撲を見せてくれよな。
(構成=佐藤祥子)