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井上尚弥、1Rのダウンの理由は…?「試合直前に大きく腕を回し」「眉間にも力が」現場カメラマンが見た.vsネリ《東京ドーム決戦》の異様
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/05/14 11:00
5月6日、東京ドームで行われた井上尚弥vsルイス・ネリ。異様な環境だったドームの熱狂を、撮影したカメラマンはどう感じたのか
モンスターの強烈なフィニッシュブローを受けたネリは、体ごとロープに吹き飛ばされて崩れ落ち、すぐに立ち上がることができなかった。
リングを降りる前、顔を腫らしたネリはコーナーポストに上がってガッツポーズ。場違いとも思えるアピールを日本のファンに見せた。計量の直後にコーラを流し込むなど、ネリの物珍しく“無邪気”な振る舞いは、少年らしさを思わせて憎めない一面でもある。
「ドームの魔物」もモンスターには勝てず
結果的に、34年前にマイク・タイソンをも飲み込んだ東京ドームの魔物は、そこにはいなかった。
試合終了後もモンスターが控室に引き上げるまでの間、大勢の観客が総立ちで激闘の余韻に浸った。ほかの世界タイトルマッチでは、試合が終わると混雑を避けるために会場を後にする観客も一定数いるものだが、この試合で席を立つ客はほとんどいなかった。このことがモンスターの圧倒的な人気を表していた。
一体、この男はどこまで行くのか。ときおり、同じ時代を生きていて写真を撮れていることが、信じられない気持ちにすらなる。これ以上にカメラマン冥利に尽きることはない。
モンスターとの激闘で受けたダメージが色濃く、病院に直行するという理由で、ネリの会見は中止になった。個人的には、敗戦後とは思えないようなネリの饒舌トークを期待していたので、とても残念だった。
一方で、試合前にホテルで日本人にサイングッズを配ったり、試合後はディズニーランドや激辛ラーメン店(蒙古タンメン中本・渋谷店)に現れたりと、激闘後とは思えない行動にはネリらしさが現れていたように思う。やはりこの男は只者ではない。試合前には引退をも示唆していたが、126パウンド(フェザー級)での再出発もぶち上げた。また別の機会に、有力な日本人選手と交わるシーンを見てみたい。