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スターダム“最後の試合”でこらえた涙…退団する林下詩美と黄金世代の絆「お前は本当の同期だから」マリーゴールドで始まる“自分のための挑戦”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/04/28 17:22
上谷沙弥、飯田沙耶、舞華とスターダムでの最後の試合を終えた林下詩美。
試合を見ながらあらためて思ったのは、林下にとって黄金世代の選手たちがどれだけ大きな存在だったかということだ。
デビュー当時から注目され、結果を出し、ベルトを巻けば団体を代表する立場にもなる。しかしキャリアとしてはまだ新人でしかなかった。プレッシャーは相当なものだったはずだ。だからこそ、近い世代の仲間、ライバルがいることが重要だった。
「デビューした時から先輩たちと比べられてきたので。結果を出してもキャリアが浅くて足りないものがありました。そういう中で、近い世代で頑張ってるみんながいるから私も頑張ることができた」
最後のスリーカウント…林下は涙をこらえた
それぞれの個性をぶつけ合うような試合で勝者となったのは、黄金世代の中で出遅れた感のある飯田だった。周りと比べると身長が低く、ケガによる長期欠場もあった。そんな飯田の勝利。しかもスリーカウントを取った相手は林下だった。飯田と林下はスターダム生え抜きの同期である。
フィニッシュとなった技は変形キン肉バスター。技名は「達者でな!」という。団体を離れた先輩レスラーへのメッセージを込めた技だったが、それが今回は同期への餞になった。
「飯田、たった2人の、私たち2人だけのスターダム10期生。お前は本当の同期だから」
林下の言葉からも関係性が分かる。試合後の飯田は、こんな言葉を残した。
「(スターダムに)入って初っ端、詩美はもうてっぺん行ってさ。超悔しかった気持ちもあるし。でも自分だって黄金世代として食らいついてきて、今日、詩美からスリー取って。今度はシングルでお前の前に立ってスリー取って、差がない同期、ライバルとして見られる存在になるよ」
聞きながら涙をこらえる林下。あらためて話を聞くと、飯田に負けたことへの気持ちも語ってくれた。
「飯田は他の黄金世代と比べたらまだ実績は残せてないけど、私に全然勝てる実力を持った人なので。今日はタッグ(での勝利)だったけど、シングルでもそうだと思ってます。
だから今日の結果は不思議なものじゃないですね。ずっと飯田が活躍する姿が見たかったんです。私が相手だけど、最後にそれが見れました」