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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「髪グチャグチャ、顔ドロドロでも輝ける」人気女子プロレスラー・安納サオリが迎えた充実期「なんかスターみたい、って(笑)」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/04/26 11:04
スターダムとの“専属契約”を発表し話題を集める女子プロレスラーの安納サオリ
「自由こそが安納サオリだなと」
フリーで参戦していた時は、スターダムの判断でも安納自身の判断でも“離脱”があり得た。だがこれからは“スターダムの安納サオリ”だ。安納の活躍はスターダムの人気拡大と限りなくイコールに近くなる。
同時に、これまで出場してきたOZアカデミーやセンダイガールズのリングにも変わらず上がり続ける。スターダムとしては特例的な、安納にとっては願ってもない自由な形の契約だ。
「自由じゃないと私が無理だなっていうのを分かった上で条件を提示してくれました。私は同じ環境、一つの場所にとどまる、収まるというのが嫌いなんですよ。自由こそが安納サオリだなというのは、フリー時代に感じましたね。
それぞれの団体に固有の空気があって、やりがいのある相手がいる。その日によって違う場所で違う料理を食べてるようなものだから、ずっと飽きずに全部おいしく感じるんでしょうね」
スターダムでベルトを保持しながら他団体にも出る。当然、スケジュールは去年と変わらずタイトだ。スターダムの地方遠征から翌日は東京の他団体。あるいはその逆。4月12~14日にも東京→大阪→東京の3連戦があった。場合によっては昼夜ダブルヘッダーも。
「家賃が払えなかったり、電気止められたり…」
「確かにスケジュールとしては忙しいです。でも女優を目指してた頃の私は全然仕事がなかった。バイトしてもお金がなくて家賃が払えなかったり電気止められたり、夢と現実に落ち込んだり。
東京に出てきて今年で15年経つけど、夢や目標に向かって何もできていなかった頃を覚えてるんです。だから今、お仕事がたくさんあって予定が埋まってるのが凄く嬉しいんですよ。しんどい、眠たいはあるけど大丈夫ですね。それも嫌じゃない。移動でバタバタしてる時間も楽しくて。“なんかスターみたい”って(笑)」
他団体出場によって、スターダムにもいい影響をもたらしたいと言う。
「私だからできることもあると思うんですよ。交流戦という形なのかは分からないですけど、架け橋のような存在になれたら。女子プロレス、というかプロレスを盛り上げたいので」
岡田太郎新社長のもと、現在のスターダムは“外”との関係を活発化させている。4.27横浜大会には大ベテランのアジャコングと伊藤薫が初参戦。プロレスリングWAVEのリーグ戦には上谷沙弥と若手の八神蘭奈がエントリーしている。
ブシロードグループで声優ユニットなど他ジャンルのエンタメに関わってきた岡田社長には“過去のしがらみ”がまったくないのだ。対外的な指針は「面白ければ行く、闘いがあるのならやる」というもの。
今のスターダムだからこそ、安納の他団体参戦にも“自由”というだけでない意味が生まれる。それもまた、想像できない1年後につながるだろう。