炎の一筆入魂BACK NUMBER

「ここにいる時点でラッキー」カープの196cm右腕・アドゥワ誠が無欲でつかみ取った5年ぶりの先発勝利

posted2024/04/08 11:00

 
「ここにいる時点でラッキー」カープの196cm右腕・アドゥワ誠が無欲でつかみ取った5年ぶりの先発勝利<Number Web> photograph by JIJI PRESS

スリークォーター気味に腕を下げた今シーズンのアドゥワの投球フォーム

text by

前原淳

前原淳Jun Maehara

PROFILE

photograph by

JIJI PRESS

 ヒール役を見事に演じ切った。

 3月31日、横浜スタジアム。5年ぶりの先発マウンドに上がった広島のアドゥワ誠が、チームに今季初勝利を呼び込むピッチングを披露した。

 開幕から2試合はDeNAのゴールデンルーキー度会隆輝の話題一色だった。開幕戦では同点3ランHR、第2戦では2ランHRを含む4安打2打点1盗塁。敵地はニューヒーロー誕生に沸いた。だが、第2戦の第1打席に広島の先発・黒原拓未が危険球を与えていたこともあり、この試合はプレーボールから不穏な空気が漂っていた。

 1回2アウト二、三塁から梶原昂希に死球を与えると、スタンドからブーイングや怒号が浴びせられた。前日まで広島は完全な引き立て役だったが、マウンド上の長身右腕は大きな青い波にのまれなかった。

「楽しむことはできないですけど、そこまでは気にならなかったですね」

 飄々と、やるべきことに集中していた。もともと雰囲気に流されるタイプではない。この日は特に気にする余裕がなかったほど、自身の投球に納得できていなかった。打者や審判でさえ、プレーを止めて風をよける場面があったほどの強風も影響した。

「捕手が構えたところに1球も行かなかったですからね。あんなことはさすがにこれまで1度もない」

 死球を与えた1回に先制点を許した。2本の二塁打に2四死球、球数は20球を要したが、焦ることもなければ苛立つこともない。ただ、シンプルに「ゾーンの中に投げて散らばってくれれば」と割り切った。2回以降は走者を出しながらも、打ち気にはやるDeNA打線を打たせて取った。苦慮した強風がチェンジアップの変化量を上げたことも幸いした。結果、5回まで61球で3安打1失点。アドゥワは1点リードを守り抜き、マウンドを後にした。

残り1枠を勝ち取った先発ローテの座

 ヒール役を演じ切った同期で同学年の姿が、球を受けた坂倉将吾には頼もしく映った。

「他人に干渉しないタイプですからね。緊張はしていたんだろうけど、周りにあまり左右されない。調子は良くなかったかもしれないけど、ストライクゾーンで勝負できていたし、球も強かった」

【次ページ】 身長196cmの強み

1 2 3 NEXT
#広島東洋カープ
#アドゥワ誠
#坂倉将吾
#新井貴浩

プロ野球の前後の記事

ページトップ