甲子園の風BACK NUMBER
スカウトが語る評価アップのセンバツ球児4人「飛ばないバットでHRと規格外ファウル」のモイセエフ、“大阪桐蔭キラー”今朝丸裕喜と…?
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS/Hideki Sugiyama
posted2024/04/04 17:03
プロスカウトに聞いた“センバツ注目の球児”。豊川のモイセエフ・ニキータ、報徳学園の今朝丸裕喜
身長188センチの長身と手足の長さも魅力で、スカウトは「球に角度がありますし、フィジカルを強化すれば球速が上がる可能性は十分です。まだ伸びしろを感じさせるので、夏の大会が楽しみです」と期待を寄せる。
伸びしろの今朝丸、完成度の広陵・高尾
成長と伸びしろを評価した今朝丸に対し、完成度の高さで突出していたのが広陵の高尾響投手だった。
高尾は今大会2試合に先発して、いずれも完投。140キロ台の直球とスライダーに緩いカーブを組み合わせ、計18回1/3を投げて23個の三振を奪った。2回戦の青森山田戦は終盤に失点を重ねて敗れたものの、7回まで無安打、無失点だった。
スカウトが最大の長所に挙げるのは直球の球質。身長172センチと上背はないが、球の回転が良く打者の手元で伸びるという。ストライクゾーンで勝負できることに加えて、直球も変化球も内外角に投げ分ける制球力もあると評する。
「直球を狙っていた主軸の打者でも高尾投手の直球に振り遅れたり、球威に押されたりしていました。ファウルでカウントを稼いだり、三振を取りにいったりできる直球の強さがあります。投球の軸となる直球が素晴らしいので変化球が生きますし、大きく崩れる不安がありません」
性格も投手向きと評価するワケ
また、性格も投手向きだと指摘する。
ピンチになっても弱気にならず、むしろ気持ちが入るタイプとみている。青森山田戦では、やや力みにつながった部分はあったが、負けん気の強さが表情や投球に表れていた。チームメートが“ド天然”と口をそろえる報徳学園の今朝丸とは対照的な性格。ただ、スカウトは、どちらのタイプも投手らしいと感じている。
「プロで成功している投手を見ると、星野仙一さんや田中将大投手のように闘志を前面に出して打者に向かうタイプも、細かいことや周りを気にしないマイペースなタイプもいます。投手は基本的に繊細です。わずかな感覚の違いでパフォーマンスが変わります。その感覚を修正しようと過度にこだわったり、気持ちの切り替えが上手くいかなかったりすると結果を残せません」
プロ野球のスカウトは「甲子園に出場した」、「甲子園で活躍した」という結果で単純に優劣をつけるわけではない。結果に至るプロセスや将来性を見極めて、各球団はドラフト会議で指名する。ただ、全国からトップレベルの選手が集まる甲子園で力を発揮できるかどうかは評価の要素になるという。球児にとって聖地は夢の舞台であり、次の夢へとつながる可能性も秘めている。