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「ディマに怒られたんですよ」サントリー大宅真樹が明かすVリーグ優勝秘話…218cmムセルスキーの本音、旧友・小野寺太志と歓喜ハグ
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJVL
posted2024/04/03 11:01
Vリーグ制覇に貢献したサントリーサンバーズのセッター大宅真樹(28歳)。先日発表された、日本代表登録メンバーにも名を連ねている
チームは身長218cmのオポジット、ムセルスキー・ドミトリー頼みからの脱却を図るため、山村宏太監督や、今季から加わったフランス出身のキャット・オリビエコーチのもと、返球が乱れた難しいシチュエーションでも、ムセルスキーだけでなく、アウトサイドの選手にもトスを分散し、状況によってリバウンドを取ったり、ブロックを利用して得点するという練習や意識づけをした。
昨季まで在籍していたカルバリョ・レオナルドコーチは、デュースの場面などではムセルスキーにトスを上げるよう指示を出すことがあったが、オリビエコーチはそうした指示はいっさい出さないと、大宅は言う。
「オリビエ自身がセッター出身で、選手時代にずっと強制されていたから、口出ししないみたいです。彼は僕のことを『アーティスト』とよく言うんですけど、やりたいようにさせてくれる。相手ブロックの動きなど助言はしてくれますけど、答えは出さない。僕が考えるのをやめないように。
やっぱり『ここに上げなさい』と言うのは簡単だし、僕自身も言われてそこに上げるのは簡単で、責任も押し付けられる。でも今年は全部任せてくれて、それだけ信頼されてるんだなと感じるし、その分、責任感を持ってコートに立てる。どこにも責任を向ける先がないことが自分の成長につながっていると思うし、すごくやりやすい環境です」
「ディマに怒られたんですよ」
夏場の準備の成果もあり、今季はハイボールもアウトサイドの藤中謙也やデ・アルマス アラインが決める場面が増えた。特にアラインは著しい成長を見せており、勝負所でも託せるようになった。攻撃が分散すれば、相手はムセルスキーだけをマークしづらくなるし、不安のある肩などの負担も減らせる。チームにとってもムセルスキーにとっても良かれと考えての大宅の配分だったが、思わぬ反応があった。
「今季は何回かディマ(ムセルスキー)よりAJ(アライン)の本数が多い時があったんですけど、そういう時にディマの気持ちが切れちゃうことがある。この間の(3月16日の)ヴォレアス北海道戦では、僕、もろにディマに怒られたんですよ。『なんで上げないの?』って(苦笑)。難しいです。僕からすれば、休める時に休んでというのがあるんですけど……やっぱり打ちたいんですよね。でもそういう選手がもっと増えてくれて、いろんな人が、上げてよ上げてよっていうふうになれば、セッターもめっちゃ楽しいだろうな。うれしい悲鳴です」
エースの欲求やチームのバランス、相手との駆け引きなど様々なことを考えながら、何より最後に勝つために、どこに上げるべきか。その集大成がファイナルのパナソニック戦だった。