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甲子園初優勝の健大高崎キャプテン“覚悟の本音”「僕らは五厘刈りで優勝できた」昭和っぽい野球か、スマートな野球か…その議論を超えた日 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/04/01 11:03

甲子園初優勝の健大高崎キャプテン“覚悟の本音”「僕らは五厘刈りで優勝できた」昭和っぽい野球か、スマートな野球か…その議論を超えた日<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

センバツを制した健大高崎ナイン

「自分の中にも歴代最強と言われているくらいだから勝てるだろうという過信があった。農大二校に負けた日の夜、ノリ半分、指導者を見返してやろうという気持ち半分で、五厘にしたんです。監督にも『伸ばすか?』って言われてたんですけど、こういう時代なんで逆に新鮮なんじゃないかという思いもありました。あそこが僕らの原点ですね」

 そこから泥臭い野球に一気に舵を切った。箱山が目指したのは兄がプレーしていた福島県の聖光学院の野球だった。戦後最長となる13年連続で夏の甲子園に出場した名門である。箱山が言う。

「聖光はスカウティングをしなくても、気持ちを一つにする精神野球で勝ち続けている。能力がなくても勝ってきた。自分たちには能力がある。能力がある選手が気持ちをそろえたら絶対、日本一になれると思ったんです」

証明した「髪型は何でもいい」

 グラウンド内は、常にダッシュで移動。1回から9回まで、常に声を出し続ける。そして、大会前は必ず五厘で統一した。甲子園でも開会式前日と、準々決勝前日は誰が言い出さずとも自然と全員が五厘にしていた。準々決勝でぶつかった山梨学院には秋の関東大会で敗れていたため、その雪辱戦でもあったのだ。

 箱山の意識の中には、昨夏、サラサラヘアで優勝した慶応の存在もあったという。

「慶応は髪が長くても優勝できることを証明した。でも、僕らは五厘で優勝できたんで、逆に何でもいいんだということを証明できたと思うんです」

 言いたいことはわかる。だが若干、混乱する。本来、「髪型は何でもいいんだ」ということを証明したのは慶応のはずである。だが、脱丸刈り化が進む昨今、確かに健大高崎は健大高崎のやり方で「何でもいいんだ」ということを証明したと言ってもいいのかもしれない。

「気合いの入れ方を(髪の)短さで表現しているんです」

 現代か前時代かではなく、モダンとクラシックの融合。2024年春、それが健大高崎の出した1つの答えだった。

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