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RIZINメインイベント「わずか1分43秒のKO劇」はなぜ起きた?“寝技師”ホベルト・サトシ・ソウザが中村K太郎を打撃で圧倒した理由 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2024/03/31 17:00

RIZINメインイベント「わずか1分43秒のKO劇」はなぜ起きた?“寝技師”ホベルト・サトシ・ソウザが中村K太郎を打撃で圧倒した理由<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

打撃で中村K太郎を圧倒したホベルト・サトシ・ソウザ(右)

「打撃でいこうと」完璧に当たったサトシの狙い

 サウスポーの中村に対して右の蹴り主体で攻めるのは定石通り。ロー、ミドルを強く蹴ることで中村の意識を下に向けさせ、さらに右ストレートをガードさせた上でのハイキック。ここまで打撃が上手かったのかと驚くしかない。

「(中村は)ウェルター級からライト級に来て力はあると思った。でもウェルターとライトではスピードが違う。だから(スピードの差が活きる)打撃でいこうと」

 サトシの狙いは完璧に当たった。もちろん、この打撃は一朝一夕で身についたものではない。サトシは元シュートボクシング王者でRIZIN参戦中の“怪物くん”鈴木博昭のジムで打撃を学んでいる。一本勝ちした試合でも、常に打撃の成長を意識してきた。それがここで出たのだ。シンプルに言えば努力の賜物である。

 鈴木はサウスポー。練習の中で、サトシは自然にサウスポー対策として右の蹴りが上達していったという。

「あなたのキックは痛いから、自分のキックをもっと信じてと言われて。それでよく練習しました。右ストレートとハイキックが今回の一番のプラン」

柔術を信じるからこその打撃

 そう日本語でコメントしたサトシは日系ブラジル人。道場「ボンサイ柔術」の創設者を父に持つ彼が2007年に日本にやってきたのは“出稼ぎ”のためだ。

 静岡県での工場勤めのかたわら柔術にも取り組み、ボンサイ柔術日本支部を開設。リーマンショックによる派遣切りも乗り越え、試合で結果を出し続けた。“ガイジン”への偏見もある中で、試合だけでなく生活そのものが闘いだったのかもしれない。

 勝つためには自分を磨き続けるしかない。柔術のテクニックで勝つだけでなく、MMAファイターとしてよりコンプリートになるためには打撃も不可欠だった。前戦はカーフキックからのパウンド連打でストップ負け。タックルで寝技に持ち込むことができなかった。

 トップどころの試合になると、タックル一発でテイクダウンすることは難しい。打撃で圧力をかけたりダメージを与えた上で倒す必要がある。柔術を信じるからこそサトシは打撃に取り組み続け、その成果が中村戦でのハイキックだったのだ。

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