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RIZINメインイベント「わずか1分43秒のKO劇」はなぜ起きた?“寝技師”ホベルト・サトシ・ソウザが中村K太郎を打撃で圧倒した理由

posted2024/03/31 17:00

 
RIZINメインイベント「わずか1分43秒のKO劇」はなぜ起きた?“寝技師”ホベルト・サトシ・ソウザが中村K太郎を打撃で圧倒した理由<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

打撃で中村K太郎を圧倒したホベルト・サトシ・ソウザ(右)

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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RIZIN FF Susumu Nagao

 “寝技師対決”として組まれた試合が打撃戦となることは珍しくない。得意分野がぶつかるからこそ、選手たちは違うところで差をつけようとするのだ。同じように、ストライカー対決の勝敗を分けるキーポイントがテイクダウンの攻防になることも。

『RIZIN LANDMARK 9』(3月23日、神戸・ワールド記念ホール)のメインイベント、ホベルト・サトシ・ソウザvs.中村K太郎の一戦で期待されたのは寝技対決だ。RIZINライト級王者のサトシはブラジリアン柔術の強豪。世界レベルで活躍するとMMAでも一本勝ちの山を築いてきた。プロキャリア16勝のうち、締め・関節技でのフィニッシュは10。最大のストロングポイントが“極め力”というファイターだ。

 中村も日本最高レベルのグラップラー。UFC経験者で36勝中16の一本勝ちがあり、異名は“裸絞め十段”。一度バックを取ったら確実に仕留めるとも言われる。

 中村の寝技の実力、打撃も含めたトータルな能力、さらにウェルター級から階級を落としてきた(ベースとなる体格が大きい)ことなど、今回はサトシ不利の予想もあった。このところ海外勢との対戦で敗れることが目立ち、前ほどにはその強さが絶対的だと思えなくなっていたことも予想に影響していただろう。

わずか1分43秒のKO劇

 だが、である。試合はサトシの圧勝に終わった。1ラウンドTKO。序盤からアグレッシブに打撃を繰り出していったサトシは、なんと右ハイキックをヒットさせる。倒れた中村にパウンドを落とし、さらにサッカーキック(顔面蹴り)。中村が立ち上がったところに連打を叩き込んで試合を終わらせた。わずか1分43秒の出来事だった。

 中村にとっては、完全に予想外の展開だった。打撃勝負をしたかったのは、むしろ自分なのだ。トータルな能力値の高い中村に対して、サトシは寝技で一点突破してくると思われた。だが実際には打撃で押してくる。その打撃が思った以上にハイレベルだった。

「今までに感じたことのないプレッシャー(圧力)でした。蹴りが見えにくかったし速くてコンパクトでしたね。パンチはある程度、見えたんですけど。組み(技)を見せてくるかと思ったらそうならなくて。逆に自分から組みを混ぜていけば展開が違ったかもしれないんですけど」

 打撃、投げ、グラウンドで殴るか極めるか。MMAにおける技術の組み合わせ、選択肢は数え切れず、ベストな展開を作り出すのは簡単ではない。MMAならではの勝負の妙、それを掴んだのがサトシだった。

【次ページ】 「打撃でいこうと」完璧に当たったサトシの狙い

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