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ブアカーオの前に崩れ落ちた“ヒール”木村ミノル…ドーピング違反からの再起戦で見えた“最大の課題”とは? RIZINが求めるクリーンな成長
posted2024/03/30 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
意外な形の“ヒーロー誕生”だった。しかもそのヒーローは、すでに誰もが知っているようなファイターだったのだ。
3月23日に開催された『RIZIN LANDMARK 9』神戸ワールド記念ホール大会。RIZIN2戦目となるブアカーオ・バンチャメークがキックルール戦に登場し、2ラウンドKO勝ちを収めた。
ブアカーオ(かつてのリングネームはブアカーオ・ポー.プラムック)は、2004年と2006年にK-1 WORLD MAX世界トーナメントで優勝。K-1中量級屈指の人気選手であり、魔裟斗の最大のライバルの1人だった。
そんな“古豪”が、今も精力的に試合を重ね、日本に戻ってきた。昨年5月のRIZIN初戦は安保瑠輝也とドローだったが、今回は41歳にして鮮やかなKO勝ち。日本では久々の勝利だ。
もちろん、勝ったことが特別なのではない。あえてヒーロー誕生と書くのは、対峙したのがヒール/ヴィランと呼ぶべき選手だったからだ。木村“フィリップ”ミノルである。
ドーピング陽性、半年間の出場停止処分からの“更生”
新生K-1でチャンピオンとなり、昨年からRIZINに参戦している木村。6月の初戦で豪快にKO勝ちしたものの、試合後のドーピング検査が陽性に。筋肉増強剤の使用が明らかになった。これを受けて試合はノーコンテストに裁定変更。またそれ以前の2試合も同様の措置が取られた。
半年間の出場停止処分を経て、大晦日に試合が組まれたもののこれもドーピング検査陽性。数値は下がっていたものの、それでも基準以上だった。薬物使用をやめても成分が残留していたようだ。だから単純に「2度目もクロ=ドーピングを続けていた」というわけではないのだが、やはりイメージは悪い。
木村は反省の弁を口にするものの、試合に向けては強気な態度を崩さず、出場停止期間中も会場に姿を現していた。安保瑠輝也からの対戦呼びかけには、客席でTシャツを脱ぎマッスルポーズでアピール。これにはRIZINの榊原信行CEOも「凄い人だなと(苦笑)。開き直ってるんですかね」と呆れるしかなかった。
そもそも、出場停止が半年間というのが“甘い”ようにも思える。6月の試合から半年間だから、検査をクリアすれば大晦日に試合ができる形だ(結果としてできなかったわけだが)。ただこれにも事情があると榊原は語っている。