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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ギャンブル依存症は欧州サッカーも蝕む…“3兆円級”イタリアの違法オンライン賭博騒動「真夜中にスマホで」“優等生MF”の転落証言が生々しい
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byClaudio Villa/Getty Images
posted2024/03/28 17:26
2022年のトナーリとザニオーロ。翌年の秋、違法オンライン賭博問題によってイタリア代表から離脱することになった
合法サイトを装っていても経営母体や監督官庁からの認可番号が明記されておらず、連絡先の住所が租税回避地であれば違法サイトである可能性が高い。
違法サイト最大の特徴は匿名登録制だ。配当金は地域に散らばる生身の“プロモーター”から現金渡しされることが多い。
資金の流れが不透明で脱税とマネーロンダリングの温床になりやすいが、スマホと通話アプリさえあればいつでもどこでも大金を動かせる手軽さと射幸心から歯止めが利かなくなる。また事故やトラブルがあったときに利用者へ何の補償もない。
昨年のイタリア国内の調査では、17%の人間が身近に違法サイトで賭け事をしている人間がいると答え、72%が国や司法の介入を望んでいるという結果が出た。今年の年頭からイタリア国会では、年々増加するギャンブル依存症への対策を内閣に働きかける動きが出ている。
“合法”オンライン賭博は違法行為にあたらない現実
一連の事件がよりスキャンダラスに報じられたのは、悪名高い“パパラッチ王”のせいもあるだろう。
先に述べた3人のギャンブル狂いを自らのゴシップメディアで暴露したのが、ファブリツィオ・コロナという芸能人だった。
コロナは過去に多くのサッカー選手を盗撮写真で恐喝し、売春斡旋や詐欺で有罪判決を受けた前科者だ。裏社会に通じる暴露系芸能人としてもう20年以上も現地メディアに露出し続けているが、この小悪党に辟易している国民も多い。
暴露王コロナは、今回のスキャンダルをなおも煽るために「ギャンブル狂いは他にも大勢いる」とローマFWステファン・エル・シャーラウィやラツィオDFニコロ・カサーレらの名前を挙げたところ、選手の代理人や弁護士から名誉毀損の訴えを出され、3月20日、ミラノ地検から告訴された。
あらためて強調しておきたいのは、イタリアのプロサッカー選手が“合法”オンライン賭博サイトで、F1やテニス、バスケなど他の競技に賭ける行為自体は、何ら違法行為にはあたらないということだ。
真夜中にスマホでベッティングを止められなかった
トリノ地検とFIGCによる複数回の事情聴取の後、ザニオーロは少額の罰金のみで、ほぼお咎めなしで放免された。
違法オンラインカジノでポーカーやブラックジャックという賭博行為をしたのは事実だが、処分裁定の最重要争点だった「サッカー競技への賭博行為」には抵触しておらず、無罪が立証されたためだ。晴れてグラウンドに戻ったザニオーロは、3月のイタリア代表に招集され、米国遠征でも存在感を放った。
だが、サッカー競技へ賭けていたことを認めたファジョーリとトナーリには長期出場停止処分が下った。