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松井秀喜を育てた“名将の父”に本音…星稜監督・山下智将が語る「家族より自分…あまり好きじゃなかった」「僕、長男なんで」《センバツ》
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/23 11:06
左)松井秀喜を育てた星稜・山下智茂元監督、右)息子で現在チームを率いる山下智将監督
山下 そこは父がやっていたからというよりは、生徒のためですね。生徒がグラウンドを見たときに「よし、やるぞ」っていう気持ちになってほしいので。きれいになっていたら気持ちがいいでしょう。僕も気持ちいいですし。部室の掃除なんかもたまにします。上級生が場所を占領してないかとかもチェックしたいので。昔、そういうイジメみたいなこともあったんですよ。ゴミをまとめてぽんと置いといたら「やばい、山下先生の部室チェック入ったな」って、もっときれいに使わなきゃと思ってくれないかな、とか。
――ひと昔前までは星稜は県内出身者が多い印象でしたが、近年は関西出身者も増えてきましたよね。
山下 3年前に学校の総合寮ができて、受け入れやすくなったというのもあります。私の現役時代は埼玉の子や千葉の子もいたんですけど、自分でアパートを借りていましたから。ただ、今もほぼ通いですよ。今、部員数は55人なのですが寮生は20人もいないと思います。
――一昨年、昨年と2年連続で夏の甲子園に出場しましたが、いずれも初戦で負けています。やはり甲子園に出たことで安堵してしまった部分もあるのでしょうか。
山下 一昨年はめちゃくちゃありましたね。4月に新監督になったばかりの田中(辰治)先生が5月に体調不良で倒れてしまって、急きょ指揮を任されたので。春に林先生がベスト8に導いたチームでもあったし、何とかして甲子園に戻してあげたかった。なので、県大会で勝ってホッとしてしまった。力のあるチームだったのに愛工大名電に14-2と大敗してしまって……。あれは完全に私の失敗でしたね。
名将の父に“本音”
――星稜は「負けて有名になる」ということをよく言われますよね。その説を覆すチャンスが、これから何度となく訪れるとは思うのですが。
山下 父がよう言ってましたね。「うちは負けて有名になるから」って。振り返ると、確かにそういうゲームが多かったんですけど。でも、この子たちには関係ないので。私、その言い方が好きじゃないんですよ。試合で劣勢に立たされたとき、生徒がそういう風にとらえちゃうかもしれないじゃないですか。それが嫌なんです。だから、私はあんまり言わないようにしています。結果が出たときに「うちは負けて有名になる学校じゃないんです!」って言ってやりたいですよね。親父に向けて、言ってやりたいです。
――お父様のように、智将さんもジムで体を鍛えているのですか。