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「NBA入りのチャンスはある」富永啓生23歳は“米大学バスケの甲子園”でも輝ける? 元NBA監督が賞賛「ケイセイは大舞台を恐れない」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2024/03/14 17:04
大学ラストイヤーに大きな飛躍を遂げた富永啓生(23歳/ネブラスカ大)。カレッジ選手が憧るNCAAトーナメントへの出場が濃厚となっている
ミシガン大を85-70で下したネブラスカ大は、シーズン22勝9敗、ビッグ10カンファレンスでは12勝8敗の好成績で同カンファレンスの3位を確定。負ければ順位が大きく変動しかねなかったこの一戦の持つ意味を、富永自身ももちろん理解していたという。
「自分たちもわかってプレーしていました。アウェイ戦ではあったんですけど、この1試合は絶対に勝たなければいけなかった。そのゲームに勝利できて、またNCAAトーナメントに一歩近づけたのは本当によかったと思います」
ハイレベルのカンファレンスで上位に入ったことで、ネブラスカ大の視界は大きく開けた。13日から始まるビッグ10カンファレンス・トーナメントを待たずして、すべてのカレッジ選手の憧れでもある通称“マーチマッドネス(3月の狂気)”ことNCAAトーナメントへの出場をほぼ決定づけることにもなった。
過小評価されている? ホイバーグHCの見解
この快進撃の立役者となった富永の今季最終成績は29試合で平均14.6得点、2.3リバウンド、1.3アシスト。どんな場所からでもロングジャンパーを決められるシューターとしての名声は、すでに米カレッジ界に轟いた印象がある。それと同時に、得点以外の主要スタッツもほとんどすべて自己最高。その成長を見守ってきたホイバーグHCは富永の総合的な向上度を高く評価していた。
「ディフェンスは1年目から大きく上達しているし、身体が強くなったことが様々な面に影響し、全体的により優れたプレーヤーになった。単なるスコアラーではなくプレーメイカーとしても確立したね。ボールがないところでの動きが素晴らしく、ゴール周辺でフィニッシュする能力は啓生が最も向上した部分だ。相手チームは彼の3Pを封じ込めようとするけれど、彼のカッティングとゴール周辺の動きは過小評価されていると思う」
現役時代にはインディアナ・ペイサーズ、シカゴ・ブルズ、ミネソタ・ティンバーウルブズで合計10シーズンにわたって活躍した元NBAプレーヤーであり、2018年まではブルズのHCも務めたホイバーグの言葉には説得力がある。
実際に富永はまだ優れたディフェンダーとはいえないものの、カレッジ入学当初のように守備時に押しまくられる機会はだいぶ減少した。大きな課題だったショットセレクションも改善し、少々難しい体勢でのシュートも決めきる決定力という魅力を保った上で、無謀なショットを放つ姿はほとんど見られなくなった。
ゴール周辺で巧さを発揮して得点する姿は頻繁に見受けられ、ホイバーグHCの言葉通り、もはや3Pだけを封じれば抑えられる選手ではなくなった。カレッジレベルではより完成されたスコアラーとなった上で、童顔のスナイパーはまもなく待ちに待った“トーナメントシーズン”を迎えようとしている。