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「あの時のことはもういいんじゃないかな」ロッテ・松川虎生が“あえて捨て去る”「完全試合の記憶」…打撃向上で正捕手を目指す20歳の決意 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2024/03/07 11:05

「あの時のことはもういいんじゃないかな」ロッテ・松川虎生が“あえて捨て去る”「完全試合の記憶」…打撃向上で正捕手を目指す20歳の決意<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

今季も二人の笑顔が見たい「黄金バッテリー」の佐々木朗希(左)と松川虎生

 守備面では一定の評価を得ている松川にとって、もっともっと伸ばしていかないといけないのは打撃の領域だ。市立和歌山高時代、高校通算43本塁打と実力を発揮してきたパンチ力をプロの世界でも見せるため昨年から打撃力アップに取り組んできた。

「守備はもちろん大事なのですけど、今のボクは打たないと一軍の試合には出られないと思う。オフは打つことに重点を置いてやってきた」と松川。スローボールに対して軸足である右足にしっかりと重心を乗せて打つことを意識した練習を繰り返した。

打撃の「意識改革」

 昨年までは早めに体重移動をしていたことでやや前のめりになり、結果的に自分のポイントでボールを捉えきれずに打球がファウルになってしまっていた。これを反省し、今年はバットの出し方、タイミングの取り方をより意識するようになった。中でも右足の股関節に体重を乗せ、左足へと重心移動するときに早くほどけないようにと我慢して打つことで、安定した鋭い打球が生まれるようになった。

「右足で打つ。イメージはそんな感じです」と松川も手ごたえを口にする。

 その変化に気が付いたのは吉井理人監督だった。石垣島キャンプの室内練習場で全体メニュー後に黙々とマシン打撃を繰り返す松川の姿に変化を感じた。「打撃がすごくよくなっているように見える」と目を細め、喜んだ。

 沖縄・糸満に場所を移しての2月25日、韓国プロ野球 ロッテ・ジャイアンツとの練習試合ではバックスクリーンに飛び込む特大アーチを放った。「いい感じで初球から捉えることが出来た。良かったと思う」と本人も納得の一発。一軍公式戦では未だアーチを放っていない男は、確かな手ごたえと共にダイヤモンドを一周した。

「様々な面で怖さを知った」

 攻守ともにレベルアップし、正捕手の座に挑む松川。プロ3年目を迎えた今でも切り離せないのは、現役選手で唯一、完全試合に導いた捕手であるという事実だ。ライオンズとの練習試合が行われた高知では、乗り込んだタクシーで運転手から、完全試合でマスクを被った補手という認識を受けた。街を歩けば、振り返る人も多かった。当時のことを松川はこう振り返る。

「あの頃は怖いもの知らずの部分があった。だからこそいいこともあったけど、今だったら、もっと考えながらリードするだろうし、難しいと分かっていることも一杯ある。いい経験だったけど、今の考え方と1年目だったあの時の考え方は違う。様々な面で怖さを知ったし警戒する大事さを理解した。あの時のようなリードは、もしかしたら今だったら出来ないかもしれない」

【次ページ】 過去は振り返らない

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