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久保建英の「目をつむった祈り」は届かず失望…現地カメラマンが見た“近いようで遠い初タイトル”「タケら選手たちは打ちのめされた。だが」
posted2024/03/02 17:01
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
スペイン国王杯準決勝の第2戦レアル・ソシエダ対マジョルカ戦は、1-1で延長戦を終えPK戦を迎えようとしていた。両チームのキャプテンマークを巻く、ミケル・オヤルサバルとアントニオ・ライージョによるコイントスが行われた。
ホームチームのコアサポーターが陣取るゴールサイドで行われることが決まると、ソシエダの10番は、サポーターへの信頼を示すように笑顔で合図を送っている。
またソシエダベンチ前からもサポーターを煽り、大きな声援を求める選手たちの姿があった。
久保は目をつむり、手を合わせて祈っていた
久保建英もそこにいた。
ファールも厭わない執拗なマークにあいながらも豊富な運動量でソシエダの攻撃を牽引した。ここまで公式戦6試合で先発出場が続いている中、延長前半14分までプレー、ピッチを後にしていた。決勝進出をかけたPK戦をピッチの外から見つめることしかできない、そんなもどかしさもあっただろうか――目をつむり、手を合わせて祈るような姿も見られた。
PK戦開始に合わせるようにポツポツと落ち始めた雨の中、ソシエダの第1キッカーに名乗り出たオヤルサバルがスポットを目指す。張り詰めた空気の中、左足で放たれたボールはドミニク・グライフの手によって弾き出されてしまった。
マジョルカからは途中出場のベダト・ムリキが、ざわついた嫌な流れを引きずることなく第1キッカーとしてシュートを成功させた。
マジョルカのメンバーと数少ないマジョルカファン、彼らを除いたスタジアムを埋める多くの者が見つめる中で粛々と進んでいくキッカーとGKの勝負は――果たしてマジョルカの5人目のキッカーとなったセルジ・ダルダのシュート成功まで新たなドラマを生むことはなかった。9人の赤い戦士たちが一斉にダルダとグライフの元へ走り始め、そして敵地のピッチの上に歓喜の輪となり咲き誇った。
ソシエダベンチへとカメラを向けると、ユニフォームを口元までずり上げ頭を抱える久保の姿が映り込んだ。茫然自失となるメンバーたちの中でも一際悲壮感を漂わせたのは、PKを外してしまったオヤルサバル、そしてこの長い死闘の中で一番の決定機だった、前半45分のPKを失敗してしまったブライス・メンデスだった。
4シーズンぶりの決勝進出は悲願だったが
ソシエダにとって決勝進出は悲願だった。