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「原点に戻ることはできたかな」田中希実(24歳)が語った米国の室内レースで日本新記録も悔しさのワケ「チャレンジしてよかったなと思います」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2024/02/28 18:16
2月に行なわれたボストンの室内1500mとニューヨークでの室内2マイルレースで日本記録を更新した田中希実(24歳)
9位という結果を見ると物足りなく思う人もいるかもしれないが、数字以上の収穫、そして心の変化が見られたレースだった。
「最近はなかなか最初から前に行けなかったけれど、今回は勇気を持ってついて行って、自分らしさの原点に戻ることはできたかなと思う」
勇気。
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それがここ数年、世界で競い合うレースで田中が見失っているものだ。
「変に順位だけを意識するのではなく、今の自分の力や課題を見つけるためには最初から全力で行くしかないと思っていました。負けることを恐れずにいけました。正当な悔しさというとちょっと変かもしれないですけど、不完全燃焼の悔しさではなく、しっかり課題が明確にあぶり出された上での悔しさ。今後につながるレースになったんじゃないかなと思います」
以前、田中は「日本ではかっこいいレースをしないといけない」とポツリとこぼしたことがあった。課題を持って取り組みたいレース展開があっても、日本ではなかなか難しい。順位を意識して守りに入ってしまったり、挑戦しようと思っていても知らず知らずのうちにブレーキをかけてしまうこともある。
今回は世界のトップ選手と戦えることを純粋に楽しめた。
「自分の中では3位から9位に転落して恥ずかしい気持ちもあったけれど、いろんな人から日本記録おめでとうと声をかけてもらった。日本人が1人で走っているから印象に残ったのだと思います。米国や海外では、日本以上にチャレンジした過程より結果を重視するイメージがあった。でも今回、みんなから声をかけてもらって、過程も評価してくれると思ってうれしかったし、チャレンジしてよかったなって思います」
2マイルレースは粘って日本最高記録
確かに五輪や世界陸上などでは結果が重視される傾向にある。しかし陸上に見識のあるファンは「室内レースの意義や選手が取り組んでいること」も評価する。そういった声も田中を後押ししたようだ。